平安幻想異聞録-異聞- 162


(162)
伊角は足を止めて、自分の指貫の裾とヒカルの顔を何度か見比べ、
それから、その裾を握る手を丁寧にほどくと、体ごと振り返って膝をつき、
ヒカルの体を支えた。
「平気か? 近衛」
ヒカルは黙って首を横に振った。どうしたらいいか判らないと言うふうに
伊角が目を彷徨わす。
「……苦しい……」
小さな声でヒカルがつぶやく。
この体の熱は、とにかく一度、中に男を迎え入れて、摺り上げられなければ
収まらない。ヒカルは経験でそれを知っていた。
荒い息をつきながら、伊角の胸にしなだれかかる。そして、間近から伊角の
顔を見上げる。
「お願い、伊角さん、楽にして」
伊角はヒカルの顔を見下ろした。そして、その瞳の奥に落ちる濃い情欲の影に、
遅まきながらようやっと、ヒカルの言う「趣味の悪い薬」の正体に思い当たった。

伊角の愛撫は、彼の人格をそのままうつしとったような、生真面目で、
たどたどしいものだった。ほとんど女とも寝たことがなかったのかもしれない。
それでも、伊角が知ってる知識を総動員して、ヒカルを楽にするために、
体の隅々まで丁寧に前戯を施してくれているのが、ヒカルにもわかった。
入ってくるときにも、伊角はなんとも律義にヒカルの顔を見て問い掛ける。
「いいのか?」
「うん。…きて」
時間をかけてほどかされたそこに、伊角の固いものが侵入してくる。
伊角のそれに奥を突かれて、ヒカルが小さく声をあげた。



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