平安幻想異聞録-異聞- 163 - 164
(163)
中で伊角が、恐る恐るといった感じに動き出す。
「……っ……伊角さん……」
「なんだ?」
「もう、…ちょっと上……っ…はんっっ!」
まさに一番の急所を突き上げられてヒカルが、大きく喘ぐ。
そろそろ勝手もわかってきたらしい伊角が、その場所を狙うようにして、
何度も自らの尖端を圧し当ててきた。
ヒカルは徐々に伊角から与えられる快さの波に身を任せてゆく。
「あっ…あっ…あっ……あっん……あ…」
伊角のものが良い所を突き上げるたび、ヒカルが細い喘ぎ声をあげながら、
秘門の入り口をキュッキュッと締めつけてくる。
いつのまにか、二人とも、快楽を追うことに夢中になっていた。
伊角の突き上げる動きが少し緩む。
不審に思ったヒカルが閉じていた目を開けて伊角を見ると、彼は困った
ような顔をして問い掛けてきた。
「その…中で、いいのか」
そのなんともいえない朴訥な問いに、ヒカルはふわりと胸のあたりが
暖かくなり、なんだか微笑ましいような気分にさせられる。
「うん、…いいよ」
ヒカルの応えを聞くと、伊角の動きが再び激しくなり、それに合わせて
ヒカルの声も自然高くなる。
やがて、自分の腸壁に、熱い脈動が打ち付けられ、濡らされるのを感じると、
自分の中に溜まっていた熱いものも同時に吐き出す。
上の伊角の体の力がぬけて、ヒカルの上に倒れ掛かってきた。
だが、ヒカルの中はまだ熱く火照って、伊角を締めつけている。
「まだ…?」
問う伊角にヒカルは小さく頷いた。「趣味の悪い薬」の効果は、思いのほか
強いものであるらしいと悟り、伊角があらためて、ヒカルの腰を抱きしめ直した。
「伊角さん…」
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ヒカルが伊角の首に手を回し、そっと顔を近づけてくる。
口付けを求められているのだとわかって、伊角は自分の唇をヒカルの
それにゆっくりと重ねた。
ヒカルが今まで自ら唇を許したのは、たったの二人。佐為と、自分だけなのだと
いう事など、伊角は知らない。
お互いの口腔内を探り合ううちに、ふたたび昂ぶってきた伊角のモノが、
ゆるりとヒカルの中で動き出す。
結局、伊角に二回、中に出されて、ようやくヒカルの体の熱はおさまった。
「大丈夫か」
なんの変哲もない言葉がヒカルの心にしみた。
伊角は添い寝しながら、彼らしいどこか遠慮がちな仕草で、ヒカルの髪を
すいて、撫でてくれている。
こんな風に優しくされたのは久しぶりに思えた。
「ごめんね、伊角さん。こんなことさせて…」
ヒカルは真剣な目をしていた。
「オレのこと、嫌いになった?」
「馬鹿を言うな」
暖かい手が、ヒカルの頭を抱き寄せた。
「この事、佐為殿や賀茂は知っているのか?」
「あいつらには言わないで欲しい。絶対」
「……わかった」
しばらくして、ヒカルが完全に落ち着いたのを見計うと、伊角は身支度を
整え始めた。
「人目につかないうちに帰ったほうがいいだろう」
部屋を外界から遮断する御簾の向こうで、月は沈み、雲は風に流れ、
夜空は細かな薄い光の星まで見えるようになっていた。
帰り支度をし、部屋から出ていく寸前、伊角は床に伏したままのヒカルに
呼びかけた。
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