平安幻想異聞録-異聞- 17


(17)
佐為は何かを叩くような小さな物音に目をさました。
気のせいだろうかと耳をこらすと、もう一度。どうやら誰かが
木戸を叩いているようだ。
こんな早朝に何か火急の用事だろうか?
それにしても、自分も、元々眠りはあまり深くないほうとはいえ、
よくあの小さな物音に気づいたものだと妙に感心しながら、
簡単に着替えて、門へと急ぐ。
もう一度、門をゆるく叩く音がしたので
「はいはい、こんな朝も明けやらぬうちになんのご用ですか?」
と、独り言のようにつぶやきながら、カンヌキを外して門を開けると、
そこに座り込んでいたのは護衛役の近衛ヒカルだった。
自分で呼びだしたくせに、まるで佐為が出てきたのが意外とでもいうように、
大きな目をさらに大きく見開いて佐為の顔を見上げている。
だが、そんなことより佐為が驚いたのは、そのヒカルのいでたちだ。
引き裂かれた狩衣、あちこちが血と土にまみれ、月明かりでよくみれば、
ヒカル自身の顔や手足にも無数の切り傷、擦り傷が……
「どうしたんです、ヒカル!その格好は…!!」



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