失着点・龍界編 17


(17)
大人の男の力で腕を掴まれた感覚。和谷と伊角との一件もまだ完全には体から
消え去ってはいない。思わずヒカルは緒方の手をサッと振りほどいた。
「進藤、大丈夫?」
アキラはそれに気が付かずヒカルの腕を反対側から支えて来た。
「う、うん。ありがとう…。」
「顔色が悪いよ…。…無理させてごめん。」
連れ立って歩く二人の後ろ姿を緒方は見つめる。緒方はアキラと会話を交わ
していた時点からヒカルの様子がおかしい事を敏感に感じ取っていた。
眼鏡の下からヒカルの右手首の不自然なリストバンドに鋭い視線を送る。

母親が病室に来ているかもしれなかったので1階のロビーで二人と別れた。
本当ならアキラとは今日の手合いの後こっそりどこかで待ち合わせをして
ゆっくり話をする約束をしていた。
それを守れなかった事を謝った。アキラは優しく笑んで首を横に振った。
次に会う約束は出来なかった。アキラの方も、学校と棋院会館以外の時間を
殆ど自宅か碁会所で過ごすようにと決められていたからだ。
「あ、そうだ、携帯…」
アキラとの別れ際にヒカルは大事な事を思い出しアキラを呼び止めた。
苦く胸にのしかかっている一件だ。
「携帯?ああ、ボク、何度も進藤に電話やメール送ったんだよ。」
「なくしちゃったんだ、ゆうべ…。ごめん…。そっちに何か変なの来て
いない?」
病院の玄関を出たところでアキラはベルトに着けていた携帯を外して開き、
オフにしていた電源を入れてみる。ヒカルは息を飲んで見つめた。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル