少年サイダー、夏カシム 17
(17)
「お盆がどうかしたのか?」
驚いてヒカルの顔を見つめる。ヒカルは何か考え事をしているのか、一点を見つめて動かない。
「お盆って、霊があの世から戻ってくるんだっけ・・・」
ヒカルの口元に笑顔が少し戻る。それを見た和谷は、訝しげに聞いた。
「もしかしておまえが泣いてる理由って、その大切な人が亡くなったからなのか?」
「違う。別にそんなんじゃない。これはただ・・・病気だと・・・なんだか寂しくて泣いちゃっただけだ」
言い訳のようにそう言ったヒカルは、思い出したのか、また泣き出した。
けれどそれは図星であることを和谷に知らせるようなものだった。
和谷は複雑な気持ちでヒカルを見る。自分にできることなんて何もないような気がしてきたからだ。
それでもそばにいて、ヒカルのために何かしてあげたかった。抱きしめてあげたかった。
「進藤・・・」
和谷はゆっくりと手をのばし、ヒカルの涙をぬぐってあげようとした。
しかしヒカルは悲鳴をあげて後ずさる。そしてうずくまって、自分の体を抱きしめて震えだした。
和谷は犯した罪を後悔して、その手を引っ込めた。そして自分を恐れながらも友達として見てくれるヒカルを、どうにかして救ってあげたかった。
|