しじま 17
(17)
進藤は抱くのは初めてのはずなのに、とても余裕があるように見える。
心のどこかで、進藤をリードしようとボクは思ってたんだ。
結果的には、主導権はいつもと変わらず進藤にある。
「とうや」
進藤が汗で額にはりついた前髪をはらってくれた。
それだけでボクはこの上ない幸福を感じる。
「オレ、おまえのその表情が好きだ」
「……え?」
「おまえ、オレのことが好きでたまらないって顔してる」
そのとおりだ、進藤。ボクはきみが切なくて苦しくなるほど好きでたまらないんだ。
そんな想いが顔に出ないはずがないじゃないか。
「好きだ、しんどうが、好きだ」
我ながら切羽詰った声だ。「うん」としんどうは言う。ここまでは今までと同じだった。
だけど続きがあった。
「オレも好きだよ、とうや」
その言葉をボクはかみしめた。
進藤を受け入れて痛みを訴えているそこが、誘うようにうごめいた。
びっくりした顔をして、でもすぐに進藤はほほえんだ。
今日は進藤の笑顔がたくさん見られてうれしい。
「オレが初めて和谷としたときさ、いつもはお酒だったのに催淫剤のまされて、わけわかん
ないうちにやられちゃったんだ」
いきなりなにを言い出すんだ。こうしてボクとしているのに、どうして和谷が出てくるんだ。
しかもきみの初めてのときのことを言い出すなんて、無神経にもほどがある。
「おまえと初めてしたときだって、やっぱり無理矢理でさ」
……それにはボクはなにも言えない。
「だからさ、こうして初めてのおまえが、オレを受け入れてくれるのが、すげぇうれしい」
なんてあけはなしに言うんだ。本当にボクはきみにはかなわない。
動きやすいように、ボクは進藤の腰を押さえていた足を外した。
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