カルピス・パーティー 17 - 18


(17)
(じゃ、社にはすげェ強く吸われたってことか・・・?)
それ以上にヒカルにショックを与えたのはその跡がアキラの身体全体に散っていることと、
その数の多さだった。
ヒカルもたまにはアキラにそうした跡を付けることはあったが、それはだいたいアキラを
背後から突く時にちょうどキスしやすい位置にある首筋か肩口の定位置と決まっていた。
今ヒカルが見ている社の跡は、愛撫の延長というより己の痕跡を残すことそのものが
目的のような念入りさで、点々とアキラの肌を侵している。
その一つ一つの跡が刻み込まれた時の状況を想像して、ヒカルはカァッと頭に血が昇る
のを感じた。

フローリングの上に横たわるアキラが白い指の甲でヒカルの膝に触れながら、気を遣う
ように言った。
「進藤。・・・進藤。キミの気分を害したなら、すまなかった」
「・・・・・・」
「・・・でもキミにも言ってあったよね?ボクはキミ以外にも・・・」
「ヤる相手がたくさんいるってな。知ってたよ。でも・・・でもさぁ、なんでオマエこんな
他のヤツの跡いっぱい付けたまま、平気でオレのとこ来れるんだよ。オマエ、オレが具合
悪いんじゃないかとか手合い休んだのはどうしてだとか、そーいう事はうるせェくらい
心配するくせに、なんでこういう時はちっともオレの気持ちとか、考えてくれねェん
だよ・・・オレは、オレはさ、」
――オマエのこと、好きなんだぞ。
そんな言葉が心に浮かんで驚いた。


(18)
(違う)
アキラが、自分を、好きなのだ。
アキラが自分を必要としているから、自分はアキラの側にいるのだ。
そうしてアキラが自分を追うあの熱い眼差しを感じ、アキラを抱いてその温かな肌を
感じる時だけ、ヒカルはどうしようもない寂しさから解放され、過去の悲しみを全部
肯定することができる。
抜け殻になるくらい泣いたことも、優しい友人を自分が傷つけてしまっただろうことも、
全て物事が前に進んでいくために必要なことだったのだと、
不思議な出会いの瞬間から全ての出来事は、自分が今アキラと共にあるために用意された
ことだったのだと、そう思える。

それなのに――
もう一度アキラの身体中に残る社の跡を眺め、体の奥底から理不尽な怒りが込み上げて
くるのを感じたヒカルは、まだ物欲しげにピンと尖り立っているアキラの胸の突起を
ぎゅっと抓り上げた。ここにだって、オレがさっきあんなに優しくしてやったのに――
あ、とアキラが身を竦ませる。
「し・・・しんど・・・う、やめ・・・っ!痛いよ・・・っ!」
白い手がぶるぶると震えて、懇願するようにヒカルの手に添えられる。
「オレはもう触ってないのに、男のくせに、ずっと乳首立てたまんまでさ。そんなに
エロい事が頭から離れないのかよ。こっちだってさっきからずっと、トロトロだよな」
と、アキラの股間のモノに舐めるような視線を移してやると、それだけでそこがビクンと
反応する。それが気に入らなくて、またぎりっと突起を抓り上げる。
「痛っ、痛い、痛い、進藤」
「ふーん、痛いのか。でも他のヤツの跡がいっぱい付いたオマエに優しく触ってやる
義理なんてオレにはないぜ?こんなの見せられた後でも、オレがオマエに優しくして
やるとでも思ってた?・・・冗談じゃねェ。楽になりたいなら、自分でしろよ」
手を離しヒカルが突き放すような低い声で言うと、アキラがはっと目を開いた。



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