失着点・境界編 17 - 18
(17)
和谷の心の障壁を取り払うのは簡単だった。
ヒカルを押し退ける方向に力が入っていたはずの和谷の両手はいつの間にか
ヒカルの背中から腰を抱き引き寄せていた。
ヒカルの首元を鏡に突き付けた時から和谷は興奮していた。
アキラとヒカルの様子を不審に思い後をつけ、廊下の突き当たりの
曲り角の向こうに微かに響くヒカルの吐息まじりの声を聞いた時から、
おそらく和谷自身自覚していなかっただろうが、ヒカルに劣情を持ったのだ。
ズボンの上からでもそれははっきり分かった。
ヒカルは和谷の舌を吸いながら右手でファスナーを下げ、和谷の高まりに
直接触れた。塞がれた口の中で和谷が声を上げる。
張り高まった和谷自身は熱を持ってヒカルの手の中でさらに硬度を増す。
ヒカルは体を起こすと自らズボンを脱いで、裸の下半身で
和谷の上にまたがった。
「し、進藤…!」
「…わかるよね…、ここに入れるんだよ…。」
和谷自身に手を添えて、先端をその箇所にあてがいヒカルは体を沈めた。
「あ、ああっ…!」
苦し気に声をあげたのは和谷の方だった。ヒカルは和谷自身の固さだけを
頼りに準備の出来ていない狭門を突き通させた。ヒカルの額に脂汗が滲む。
あまりのきつさに一瞬和谷のが萎えかけるが、ヒカルが再び和谷の唇を求め、
耳元で一言二言囁くと再び固さを取り戻した。
「もっと深く…入って…和谷…」
言われるままに和谷はヒカルの腰を両手で押さえると、腰を突き上げた。
(18)
激しく鋭い痛みがヒカルの体芯を貫いた。
「…っ!!」
思わず腰を浮かしそうになり、唇を噛み締めて踏み止まり奥深くへ和谷自身を
受け入れる。
「進藤、…お前、辛いんじゃないのか?」
おそらく生まれて初めての感触に高まり呼吸を荒く乱しながらも和谷が
心配気に声をかけてきた。ヒカルは答える代わりにキスを重ね、少しずつ腰を
動かす。抜けそうなところまで和谷を吐き出し、体が触れるまで収める。
「ああ…っ」
本能的に勝手がわかるのか、和谷もじきヒカルのリズムに合わせて腰を
突き上げ、下ろすようになり、次第にそのテンポを早くする。
ヒカルに対する思い遣りより己が階段を上り詰める事に専念し始める。
ヒカルは固く目を閉じて苦痛と異物感のみ受け取っていた。
それで良かった。イクつもりは最初からないのだから。
ヒカルのシャツの背中が冷たい汗でびっしょりと濡れていた。
「ううっ…んっ…!!進藤…!!」
ヒカルの体の下で和谷の体がビクンと振れた。直腸の中に熱いものが
滲みていくのを感じた。和谷はヒカルの背中に両腕をまわしてきて
強く抱き締め、人の中で出すという衝撃的な初体験の余韻に浸っていた。
シャツを通して和谷の心臓の鼓動がヒカルの胸に響いてきた。
ヒカルはその和谷の腕から逃れるように体を離した。
「進藤…?」
「これでわかっただろ。頭が変なのは塔矢じゃなくてオレの方なんだよ。」
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