ウィロー 17 - 18


(17)
途端にヒカルタンが
「うぎゃあ!」
と、一声叫んだ。



――――――“うぎゃあ”って・・・・・・
いくら何でも“うぎゃあ”はないよ。
いつも「ああん?」とか「いやん?」とか、可愛い声で啼いてくれるじゃないか・・・
オレは切々と訴えた。
色気がないとか雰囲気ぶちこわしとか、勝手なことを言い続けた。
「うる・・・せ・・・何で・・・オレが・・・ヘンタイを・・・喜ばせなきゃ・・・いけねえんだよ・・・」
そんなオレに、ヒカルタンは顔を伏せたまま、途切れ途切れに憎まれ口を叩く。
だが、その伏せられた顔の両脇に添えられた手は、爪を立てて、畳を掻きむしっていた。
オレが、中で指を動かすと、細い肩がビクビクと揺れた。
ふふふ・・・
感じているね、ヒカルタン・・・
オレは、ヒカルタンの感じるところは熟知している。
だから、ココをこうすれば・・・
「ァン・・・」
ヒカルタンが背中を仰け反らせて、小さく喘いだ。
その表情は、直接は見えないけど、オレにはよくわかっているよ。
切なげに眉を寄せ、長い睫に縁取られた大きな瞳を隠すように瞼を閉じている。
薄紅色に染め上げられた頬と、それ以上に赤い唇が誘うように戦慄いているのがハッキリと
脳裏に浮かぶ。
オレは、ソレを確認するために、ヒカルタンの中を探る指を引き抜いた。


(18)
ヒカルタンの身体に一瞬力が入った。
くっきり浮き出た肩胛骨が、背骨に寄るのが、脱げかけのシャツから垣間見えた。
ヒカルタンの肩に手を回し、ゆっくりとこちらの方に向けた。
・・・・・・やっぱりね。
オレは、ニヤリと笑った。
想像した通りの顔が、ソコにあった。
どんなに、減らず口を叩こうとも、ヒカルタンがオレの愛撫に感じていたことは明白だ。
浅い呼吸を繰り返しながら、ヒカルタンは緩慢な動きで瞼を少し持ち上げた。
ヒカルタンは黙ってオレを見ている。
その目の前で、オレはゆっくりと指を自分の口へ持っていった。
ワザと見せつけるように、しゃぶる。
途端に、ヒカルタンは嫌悪の視線をオレに向けた。
見たくないものを見せた・・・!
そういわんばかりに、侮蔑に満ちた冷たい目。
ゾクゾクした。
最高だよ、ヒカルタン!
もっと、もっと、もっと・・・その目でオレを見てくれ!
本当は、そのままヒカルタンにキスをしたかったが、そうすると睨まれるだけではすまないような
気がして諦めた。
ヒカルタンに罵倒されたり、蹴られたりするのはいいが、別れ話はイヤなのだ。
殴られるのは大歓迎でも、捨てられるのは絶対ゴメンだ!
「・・・オマエ・・・ホンモノのヘンタイだ・・・救いようのないバカ・・・」
「全部食べるって約束したじゃん・・・ムダになんかしないよ・・・」
オレが笑いかけると、ヒカルタンは赤くなって目を逸らした。



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