Shangri-La第2章 17 - 19


(17)
唇が塞がれると、待ち焦がれたアキラは両腕をその首に絡めた。
アキラが伸ばした腕の先には、確かに自分を抱き締めてくれる人がいた。
煙草の匂いが鼻を掠める。
自ら差し入れて絡めた舌からビールの苦味が伝い、
唾液の混じる音が脳髄にまで響くようだ。
触れる肌も、その奥の熱も、体中を弄る手の感触すら
身体中に過ぎるほどの幸せをアキラにもたらした。
一瞬のうちに身体中から熱が放出される感覚に酔い
やっと捕らえた雄を夢中で貪った。
溢れることすら出来ず体内で増幅されていくばかりの熱に
アキラが夢中で浸る中、不意に緒方はアキラを突き放した。
「アキラ。もう、おねだりの仕方も忘れたのか?」
始めは何が起きたのか分からないといった様子で
ぼうっとしていたアキラだったが、その視線に
焦点が定まってきたのを見て取った緒方は、促すように
枕を背にして身体を起こし、膝を立てて開いた。


(18)
「ようし、いい子だ…」

アキラは緒方のバスローブの前をはだけさせると
その膝の間に滑り入り、その場にかがみ込んだ。
口いっぱいに頬張った緒方の肉棒は大きくて顎がきつかったが
それがこの後埋め込まれると思うだけで期待で胸が膨らむ。
しかも優しく褒めて貰えて、頭まで撫でてもらえるなんて
嬉しくてたまらなかった。もっと可愛がってもらいたくて、
アキラは菊門の疼きを堪えるように腰を振り
湿った淫らな音を立てて、懸命に緒方の肉棒にむしゃぶりついた。
緒方がぴくりと反応して、また少し大きくなった。
もう少し頑張れば、緒方の指が入口に伸びて、
もういいぞ、と言ってもらえるはずだ。
更に音を立て口で緒方を扱くアキラの頬が、
緒方に見えない場所で少し緩んだ。

緒方は目を細めてそんなアキラを見つめていた。
関係を持っていたころのアキラはどこか淡泊だったからか
今この目の前の必死さがなんとなく愛おしい。


(19)
「――そんなに、欲しいのか?」
背中からゆっくりと撫で回すと、アキラは動きを止め、こくりと頷いた。
「進藤じゃなきゃダメなんだろう?お前がそう言ったじゃないか?」
その言葉にアキラは一瞬身を固くすると顔を起こし
絶望を灯した瞳で緒方を見据えた。
「何も俺じゃなくたって……お前を抱きたいと思うヤツは沢山居るだろう。
 だいいち他の男のモノに手を出して、トラブっても面倒だからな…」
緒方はサイドテーブルに手を伸ばし、煙草に火を点けアキラの表情を窺った。

確かに、緒方との関係を清算したときの言葉の中に
そんなようなニュアンスのものが合ったとは思う。
だが、今日の緒方は自分を受け入れてくれている、そう思っていた。
いつだって、厳しく接してはいても根本はいつだって優しくしてくれたし
アキラの小さなわがままを叶えてくれたのは、両親ではなく緒方だった。



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