平安幻想異聞録-異聞- 171


(171)
「あのまだ何も知らぬ幼い肌に男同士のまぐわい事を教え込むのは、さぞや楽しいこと
 であったろうのう。儂もぜひあやかりたいものよ」
「佐為殿もそのような御趣味ともっと早くに聞き及んでおれば、この顕忠、見目のよい
 寵童の一人やふたり、世話をさせていただいものを。いや、もしや、佐為殿は抱くほう
 より抱かれる方がお好みなのかもしれませんな、座間様」
目の前の二人を睥睨するように、佐為はゆっくりとまぶたを上げた。
「ヒカルに……ヒカルに何をしているとおっしゃられた」
その声は、谷の底から聞こえる風鳴りの様に低い。
その瞳の奥に燃え立つ、凍るような青い怒りの炎に気付いて、二人は一瞬
たじろいだが、すぐにそれを恥じたように、口を開いた。
「お怒りになられたか? いや、これは失敬。なるほど貴殿にとっては、自らが
 喰らうつもりで育てた果樹の実を、横から出た儂たちの手に攫われたようなもの。
 これはとんだ不作法であったのう」
「どうやら、果樹の番人は御立腹の御様子。男女の仲の悋気より、男同士の仲の
悋気の方が激しいと聞き及びますが、まことのようでございますなぁ」
薄ら笑いを浮かべながら菅原が座間に迎合した。
二人が、佐為を言葉で嬲って楽しんでいるのはあきらかだった。それが佐為の内の
怒りの炎に、油を注いでいるとは気付いているのかいないのか。
「近衛ヒカルは、警護役として座間殿のおそばに参ったはず。しかし、今のお言葉から
 察っせらるるにどうやらそれ以外の仕事にも従事させられている様子…」
「あの検非違使をどう扱おうと、儂の勝手であろう。検非違使庁からは儂の
 特別警護の手当ても十分に近衛の家に届けられてお……」
座間はその言葉を最後まで紡ぐことはできなかった。
佐為の手が、座間が持っていた扇を奪い取り、それを床に叩きつけたからだ。
高い音を立てて、その親骨が折れた。
「近衛ヒカルの身を、あなた方はそのように奴婢でも扱うように、金銭で取引き
 されたのかっ!?」
菅原が気色ばむ。



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