裏階段 ヒカル編 171 - 175
(171)
試すように腰に廻した方の手の指先を、双丘の谷間に沿わせ進藤の奥の部分まで辿る。
「あっ…」
さすがにその部分に触れられる事に躊躇して反射的に進藤が腰を引く。
その腰を腕でしっかり抑え、ゆっくり指を進める。
「ん…っ!」
固く膝を閉じようとするのにも構わず、目的の場所で力を込めると、狭門の隙間を
すり抜けるようにして指が深く入り込んだ。
「ん…んっ!あ…」
腰を固定され壁とオレの体に挟まれるようにして身動き出来ない状態で、
両肩を竦めて全身を強張らせ、進藤はただ立っているのがやっとだった。
そのまま進藤の内部を探りながらもう一方の手で前の彼自身を嬲ると
彼の吐息が激しく変化しだした。
「やだ…っ、あ…っ…んーっ…」
指を増やした後ろと前でじわじわと彼を追い上げ、焦らすように所々で
手の動きを止める。何度か予兆のように進藤の全身が震えた。
「…んっ!…んん…」
進藤が苦しげに首を振る。無意識の内にその先の行為を促すように
オレの腕を掴んでいる彼の指に力がこもる。
望み以上のものを与えるべく、時間をかけて、慎重にそれを扱う。
次の瞬間、電流が突き抜けたように進藤の内と外が同時に強く震え、弾けた。
(172)
「…い…や…、うあ…っ!!!」
こちらの指の圧迫を跳ね返そうとするように若々しい脈動が走り、一際極まった悲鳴があがる。
「ハア…、あ!ああ…っ、あーっ…!!」
眉を寄せ、口元を歪ませてガクガクと進藤の全身が震える。
手の中に熱い体液が散って、指の隙間から溢れ出て進藤の腿を伝わり落ちる。
そのまま前も後ろも手を動かして進藤に全ての熱を吐き出させた。
彼の身体が反応に応じる限り続けた。
「も…う、いや…あ…あ…!」
しばらく全身を痙攣させて呻いた後、脱力したように進藤の体が崩れ落ちそうになった。
それを抱え直して彼が吐き出した体液を彼自身の奥深くに念入りに塗り付ける。
ベッドに移動するまで待てなかった。
既にオレ自身が彼を求めて限界近く持ち上がり熱を滴らせていた。
ふと、進藤が無言でオレのその部分を眺めているのに気付いた。
いざとなればまた激しい抵抗があるものと予想していたオレは多少戸惑った。
闇に慣れた目でも細やかな表情は読み取れない。
だが、その時の進藤の瞳の奥はおそらくぽっかりと穴が開いたような空洞に
見えたかもしれない。
他の者には想像がつかない虚無を抱えている進藤の意識を手元に引き寄せたかった。
何を引き換えにしてでも――。
(173)
バスルームの壁に小柄な彼の体の背を押し付け、片膝を抱え上げた状態で、
指先でもう一度慎重に彼の体内を探る。
「…痛エよ…」
そう不満を漏らしながらも進藤はこちらに身をまかせたままだ。
そんな彼の深部に強引に欲求の象徴を宛てがい、彼の体を抱き上げ、
その部分に体重がかかるようにしてこちらの腰を徐々に突き上げていく。
「く…あっ…!!」
オレの手によって到達した直後で脈打つ内壁を、熱い異物によって押し広げれられ焼かれる
苦痛に進藤がようやく抵抗の兆しを見せる。
そんな彼の悲鳴を唇で塞ぎ、二度三度、彼の体を抱えて埋めるという行為を繰り返して
ようやく全てを進藤の奥深くに到達させた。
「くう…、うう…っん…!」
痛みと緊張感からガクガクと進藤の全身が震えていた。
アキラとの時とはまるで違う達成感にオレは夢中になった。
与えられようとして与えられたものではなく、望んで望んで、それでも手に入らないと
諦めていたものがようやく得られようとしていた。
(174)
衝動のまま腰を突き上げ動かそうとした。その時だった。
「ん…ヒック…ん…うう…」
あまりに無謀な行為に耐え切れなくなった進藤の嗚咽に我に還った。
やはり今の体勢では相手に負担が掛かりすぎると思い、一度彼を離した。
バスタオルで彼の体をくるむようにして抱きかかえ、ベッドの上に移動する。
後悔からか、さっきまでの態度とはまるで違って、幼い子供のように
進藤は両手首で顔を擦るようにして泣きじゃくる。
だがそれらに気を回す余裕はなかった。
ベッドの上に彼の体を横たえて上に被いかぶさると、一層進藤の泣き声は大きくなった。
顔を隠そうとするように被う彼の両手首を掴んで彼の体の両脇に押さえ込む。
「何かを忘れたいと言ったな……。忘れさせてやる…。狂わせてやる」
もう一度最初から、アキラにシュミレーションしたように進藤の体の奥底から熱を呼び起こす。
進藤の嗚咽と悲鳴が混じり響く中で行為は続行された。
若い肉体はこちらが導く方向に素直に従い際限なく、溢れに溢れた。
泣き声はじきにくぐもった切ない吐息が混じるようになった。
それでも涙は止まらないらしく、彼の頬は濡れたままだった。
(175)
今度こそ時間をかけ、十分に受け入れ準備を整えさせた部分に再び腰を重ね進める。
「はっ…ああ…っ、うん…っ!!」
狂ったように進藤は喘ぎ身を仰け反らす。
その身を抑え込み、貫く。
これ以上はないというくらいに進藤と深く結びつき、その体を思いっきり抱き締めた。
ベッドの軋む音が響く間、進藤の泣き声は止まなかった。
甘い呼び掛けや意識の交流はなかった。
ただ本能のままに、快楽だけを貪り与えあう者同士がそこに居た。
それでもオレは満足だった。
彼を追い詰めこちらの意志によって開放させてやる事が出来たら、その瞬間に
彼を手に入れた、そう思う事が出来るような気がした。
誰1人として足を踏み入れた事のない新星の大地に降り立とうという優越感があった。
その輝きを独占出来たと信じたかった。
「…あ…あ…あ」
うわ言のような声を漏らし、進藤が大きく喉元を仰け反らした。
一気に彼の体温が上昇していくのがわかった。
その間際に進藤の両腕が伸ばされて来て、オレの首に絡み、進藤の方からオレに抱き着いてきた。
ようやく彼を獲る事が出来た、と思った。
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