トーヤアキラの一日 18
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ヒカルは、歩きながらずっと最近打った碁について喋っていた。アキラは「うん」とか
「そうだね」としか言わなかったが、とにかくヒカルは喋りたかったようだ。
いつどこで決まった事なのか分からなかったが、ヒカルは当然の様にファーストフードの
お店に入って行き、カウンターで飲み物やポテトを注文する。
「お前もポテト食べるだろ?飲み物はコーヒーでいいよな」
「うん」
アキラが財布を出そうとすると
「あ、いいよ後で」
と言って、トレイを持って、スタスタと禁煙席の奥の方に歩いていく。その場所は少し
奥まっていて、隣の席からも少し離れているので落ち着く場所なのだ。
コートを脱ぎながら座ると、ヒカルはまた話を続けた。
ヒカルの口から繰り出される碁の話を聞いている内に、少し落ち着いて来ていたアキラは、
ヒカルの向かい側に座り、ヒカルの顔をひたすら見つめる。
この一ヶ月、会いたくて会いたくて仕方なかったヒカルの顔。大きく見開かれた瞳は
キラキラ輝きながら、アキラの顔とトレイにあるポテトを行ったり来たりしている。
夢中で喋る事で興奮しているのか、頬はうっすらとピンク色に染まっている。口元は
喋ったり食べたりで、忙しく動いている。ポテトの油で少し光っている唇は、赤みがあって
艶を帯びていて、恥ずかしくてアキラは直視する事が出来ない。細い首に付いている可愛い
突起は、食べたり飲んだりするたびに上下に動く。
今までは意識しなかったヒカルの全てが愛しく思え、自分のヒカルに対する恋愛感情が
嘘では無かった事を、はっきりと悟った。
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