無題 第2部 18
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「和谷、今日、塔矢もくるってさ、いいだろ?」
「えぇっ?塔矢ぁ?」
しかし、アキラの予想通り、彼は露骨に嫌な顔をした。やっぱり、とアキラは思った。
「いいよ、進藤。ボクは遠慮しとくよ。急に人が増えたんじゃ、和谷くんだって迷惑だろうし…」
「えーっ!?いいじゃん、人数なんか、鍋なんだしさ、いいだろ?和谷?」
しかし、和谷の方はとても「いい」なんて顔はしていない。
「今日はボク留守番してなきゃならないし、また次の機会に御一緒させてもらうよ。」
ヒカルがまだ納得していない風なのを、そういって押し切った。
「次の機会なんてねーよ。」
だが、和谷が小さな声でそんな風に毒づいたのが、アキラにも聞こえた。きっと進藤にも聞こ
えただろう。が、あえて聞こえないふりをして、進藤や他の人達にも挨拶してその場を去った。
「なんだよ、和谷ってばさ、そんなに塔矢の事嫌わなくてもいいじゃん?アイツ、ああ見えても
イイ奴だぜ?」
「うるさいなぁ、オマエもよくあんないけ好かないヤツと友達してるよな。
でも、オレはアイツは嫌いなんだから、少なくともオレと一緒の時は、あんな奴誘うなよ。
オレは絶対イヤだからな!」
去っていくアキラの背に、そんな言葉が聞こえてきた。
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