アキラとヒカル−湯煙旅情編− 18
(18)
「オレは、おまえを抱きたかった。あれを見てからずっとおまえとやる事ばっか頭ん中ぐるぐる回ってた。」アキラは加賀の横顔を見つめていた。
「あのまま傍にいたら、きっとおまえに手を出してた・・・あの禿オヤジとオレは同類だな。」
加賀は、向き直ると、ぽん、とアキラの頭を叩きその瞳を見つめた。
「アキラ、おまえが汚いからじゃねえ。おまえは汚くなんかねえ。」
間近にある懐かしいその顔は、あの頃よりも精悍で男っぷりが良く、その瞳は鋭気に満ちていた。
正直、言われなければあの加賀だと気づく事はなかったかも知れない。
だが、アキラを慈しむように包み込む温かさは昔のままだった。
「わかったら、寝ろ。」
加賀は、アキラの乱れた胸元を合わせ、整えてやると、断ち切るように体を起こした。
「その方がいい。」
つぶやくようにアキラの唇が動いた。
「その方が良かった。」
アキラが何を言いたいのかがわからず、加賀は、虚ろなアキラの視線を追った。
二人の視線が絡んだその瞬間、アキラは加賀に身を預けた。そして加賀の胸に頬を摺り寄せた。
なぜそんなことをしたのか、アキラにもわからなかった。
ヒカルを愛し、触れ合いたいという衝動に何度も駆られた。
だが、ヒカルと愛し合おうとすると体がすくんで、自分ひとり、暗く深い闇の中に放り出され、沈んでゆく。
他人の侵入を拒む自分がいる。それは相手が愛する者ゆえなのかもしれないし、全く違う理由が存在するのかもしれない。そんな自分をどうすることも出来なかった。
今も、加賀を欲している自分にアキラは戸惑っていた。
加賀に好意以上の気持ちを抱いていた事は事実かもしれない。だが、今は何ものにも代えがたいくらいヒカルを愛している。
それなのに、この瞬間、加賀を死ぬほど欲しているのも、また事実なのだ。
本能が加賀を求め、癒しを請うていた。
アキラの瞳は熱を持ったように潤み、誘うように揺れた。
「ば・・・っか・・・。」
こらえていた衝動が一気になだれこむ。
加賀は、僅かに開かれたアキラの唇から舌を進入させた。アキラもそれに応え舌を絡ませてきた。
やがてふたりは狂ったようにお互いをむさぼり合いながら、縺れるようにして倒れこんだ。
|