誘惑 第三部 18
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もう、言葉なんて要らない。
ヒカルの手がアキラのスーツの上着を腕から落とし、ネクタイを解き、ワイシャツのボタンを外していく。
その間に、アキラの手がヒカルのTシャツをたくし上げ、頭から引き抜こうとする。
ベルトの金具を外しジッパーを下ろすと、アキラの着ていたスラックスがそのまま床に落ちる。ヒカルの
ジーンズは足に絡まる。アキラはヒカルを抱き寄せてベッドに倒れこみながら、ヒカルの下着に手をかけ
てジーンズごと引き下ろすと、ヒカルの手がアキラの下着を下ろしながら片足に残ったジーンズと下着
を蹴り飛ばした。
そうして全てを脱ぎ去った二人は、隔てるものが何もなくなった素肌の感触を確かめるように抱き合う。
が、ヒカルは、その抱きしめた身体の細さにショックを受けた。
服を着ていた時よりもはっきりとわかるアキラの身体は、腕に残る記憶よりも、全部が一回りずつ小さい
ような気がした。
肩の薄さが、手にあたるゴツゴツした骨の感触が、痛々しかった。
少し力を入れたらそのままぽっきり折れてしまうんじゃないかと思うくらいだった。
ヒカルは振り切るようにアキラの肩を掴んで身体を引き離した。
「ダメだ。今日はやめよう。」
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