身代わり 18


(18)
重みが消えて、ヒカルは安堵した。佐為も大きく息を吐いている。
「大丈夫ですか?」
うつぶせのまま見上げているヒカルを白川が起こした。
「せ、先生、あの、どうも、その……」
お礼を言いたいのだが、言えば悟られてしまう気がしてヒカルは口ごもった。
いや、もうバレているのかもしれない。
白川は黙ったままヒカルの乱れた髪を手で梳いている。
いつもと変わらぬその雰囲気に、ヒカルの気持ちもほぐれていった。
「先生は、いつから来てたんですか」
ヒカルは思い切って聞いてみた。だが白川は笑みを浮かべたまま答えなかった。
じつは部屋の外までヒカルの喘ぎ声は聞こえてきていた。
すぐに状況を察した白川は、続いてやってきた和谷に小金を握らせ、売店でなにか飲みもの
を買うように言った。もちろん後から来た者の足止めも言いつけた。
しかしこのことをヒカルに言う必要はない。
「白川先生?」
見つめてくる白川をヒカルは見上げる。その様に白川は唾液を飲みこんだ。
二人の様子を見ているあいだ、白川は平静でいられたわけではなかった。
(……すぐに止めに入らなかった私も、冴木くんと変わらないですね)
自分が冴木のように行動に起こさないのは、それだけ理性が働いているからだ。
それがありがたくもあり、口惜しくもあった。
《ヒカル、誰か来ましたよ》
笑い声が聞こえる。和谷たちが来たのだ。白川はもう一度ヒカルを見た。
「あまりオフザケは良くないよ」
素直にヒカルはうなずいた。もう二度とあんな目にはあいたくない。
だが、もう一度あの快感は味わいたいと思ってしまった。



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