落日 18


(18)
容赦など要らぬ。
甘い顔を見せてやれば、これはまた何も知らぬげな顔をして、誰とも問わず彼を目にする男を
残らず誘惑するのだ。だからこれは正義だ。ヒトを闇に、暗い情欲に引きずり込む魔は調伏せ
ねばならぬ。
「イヤ…イヤだ……や、…あ、あぁ……っ!」
懇願する声など聞き入れず、むしろその声を楽しむように乱暴に抜き差しし、更に内部を抉る
ように動かすと、拒み続ける声は次第に愉悦を含んだものに変わり、その媚態が更に怒りを
増幅させる。前に手をやると萎えていた筈のものはまた勃ち上がり、蜜を溢している。
この淫魔め。
誰彼構わず男を咥えこみ、快楽の淵に引きずり込もうというのか。
だが俺は飲み込まれたりしない。
そのように淫らに喘いでみせても、俺は誘惑などされない。
繋がったまま強引に体勢を入れ替え仰向けに転がすと、痛みに少年が泣き叫ぶ。
萎えかけた陰茎をぎゅっと握りつぶしてやるとヒイィッと高い悲鳴が上がる。
それなのにゆっくりと抜き差しを開始すると、悲鳴はまた喘ぎ声に変わり、彼のものもまた勃ち
上がって淫らな涙を溢す。
「あ……あ、…あぁ、」
快楽に咽び泣く声が男の情欲を煽り、動きを加速させ、荒々しい動きの果てに、ついに少年の
最奥に怒りに満ちた欲望を吐き出し、同時に彼も震えながら白い精を腹の上に撒き散らす。
荒い息に胸を上下させ、半開きの赤い唇からは涎が零れている。白い身体はまだらに紅く染まり、
身体から、吐息から、男を惑わせるような甘い香りが強く薫る。麝香にも似たその香りに幻惑され
て、彼の内部で男のものがどくっと脈打ち、膨れ上がる。
身体の内部に感じる変化から身を捩って逃げようとする細い身体を逃すまいと掴まえる。
「お願い…もう、許して……」
啜り泣きながら許しを請う声は、更に嗜虐心をそそるものでしかなく、残忍な笑みが顔に浮かぶ。
手に落ちた獲物の顎を捉え、こちらを向かせる。白い布で視界を覆われた小さな顔が、怯えたよう
に頭を振る。流れ出る涙が目隠しの布を濡らしている。
顎を掴む手に更に力を込めると、彼の顔が痛みに歪み、彼は耐え切れずに小さく言葉をこぼす。
「ゆるして、伊角さん…」



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