社妄想(仮) 18


(18)
「塔矢!」
背後から声を掛けられて振り向くと、そこには顔だけは良く見知っている相手が立っていた。
「あ、ええと……和谷君、だったよね」
アキラが考え考え答えると、和谷はそんな事どうでもいいというように、もどかしげに両腕を振り回した。
「進藤見なかったか?」
「進藤? 進藤は今日北斗杯の予選じゃないのか?」
「だからっ! いねーんだよ、どこにも! もうすぐ午後の対局が開始しちまうってのに……!」
その和谷の言葉を聞いて、午前の相手には勝利した事をアキラは知りえたが、
それで喜んでいる場合ではない事も分かった。
「オレも午後から越智と対局だし……本当はあいつに構ってる時間なんてねーってのに」
口ではそう言いつつも、和谷がヒカルの事を心配している事は見てとれる。
「ボクも探すよ」
アキラがそう返すと和谷は頭を掻きながら俯いて、悪ぃ、と呟いた。
何が「悪い」んだろうと考えて、謝るべきは進藤だと思った。
他人をいつもハラハラさせて……、一体どこで何をしているのやら。
とりあえず、全ての階を見回ってみようと思い、アキラが階段を上りかけた時だった。
上から見慣れない少年が降りてきた。
通常なら、通り過ぎてすぐに忘れるだけなのに、妙に印象に残ったのは、その彼が
今まで見た事のない、変わった目をしていたからかも知れない。
通り過ぎる瞬間まで、アキラは手摺に手を置いたままそこを動けなかった。



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