初めての体験+Aside 18 - 19


(18)
 しかし、眠りの妖精は思わぬ所に舞い降りた。
「ふわぁ…」
ヒカルが小さく欠伸をした。なかなか決着のつかない勝負に、ヒカルの方が疲れたらしい。
『進藤――――――!寝たらアカン!』
社は心の中で叫んだ。ヒカルの身体は、微妙に揺れている。そして、徐々にアキラの方へ
倒れ込んでいった。
「大丈夫かい、進藤?」
アキラがヒカルの肩を抱いて支える。
「う―――うん…平気…」
ヒカルは目を擦った。何とか瞼を持ち上げようとするが、どうしても出来ないらしい。
「無理しないで…寝てもいいんだよ?」
優しい言葉。ヒカルには、べたべたに甘いアキラであった。
 アキラは、ヒカルの髪を梳きながら、そっと抱き寄せた。そして、社の方に顔を向けると
口元だけで笑った。
―――――なんや!?その笑いは?
ヒカルは自分のモノだと言いたいのか、それともこれから酷い目にあうであろう社への冷笑か?
『アカン…このままやったらオレはヤられる…』


(19)
 「負けました!」
社は叫んだ。と、同時に、ヒカルの目がパッチリと開かれた。
「じゃ、次はオレの番!」
 無邪気に喜ぶヒカルと、場所を入れ替わる。本当は、まだやれる。しかし、時には
勝負を捨てても守らなければならないモノもある。
『本音は塔矢が怖いだけやけどな…』
 横目でチラリとアキラを見ると、彼は涼しい顔でもうヒカルとの対局に入り込んでいた。

 それから、何時間経ったのか…気が付くと夜は明け、もうすでに昼前だった。
「ありません…」
社との対局でのアキラの言葉である。素直に喜べない。なぜなら、アキラが薄笑いを浮かべて
自分を見ているからだ。コレは、心理作戦だと思った。アキラの行動に、自分がいちいち
ビクつくのを面白がっているのだ。それでも動揺してしまう。喉がからからで、口の中が
粘つく。
「進藤…お茶一杯いくれへん?」
 その瞬間、アキラの瞳が鋭く光った。



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