○○アタリ道場○○ 18 - 22


(18)
それに、この海はサメが出て人を襲うから気をつけろと、地元の方が言って
いたのに、その助言を無視して緒方さんは好き勝手なことをしています。
実際にサメが出たら どうするのでしょうか。
・・・って言っているうちに、本当にサメが出てしまいましたっ!!
おっ、緒方さんが危ない!!!
ボクは、どうしていいか分からず、トイレにこもりきりの芦原さんは
ほっといて、船内にいるお母さんを思い出し、キッチンのドアを開けました。
・・・・・・ああぁ、お父さん・・・・、ボクは目の前の光景は本当に現実なのだろうかと
疑っています。
だって、暗い船内のキッチンで お母さんがマンガ日本昔ばなしによく登場
するような、どデカイ包丁をシュッシュッと石で磨ぎながら、
「腕が鳴るわぁ〜、腕が鳴るわあぁあああ〜、
新鮮な海の幸よ、主婦の腕の見せどころよ!
オ―――――――――――ホッホッホ──ォオ!!」
と、雄たけびをあげています。
・・・・・・ああぁあ、お父さん・・・・、きっとボクは疲れているんでしょうね。
これは全て夢なんですよね。
でも、この状況で頼りになるのはボクだけだ。
かろうじて、それだけは分かるので緒方さんを助けられないかと必死に考えを
めぐらせ、とりあえず浮き輪にロープを巻き、緒方さんの方へ、それを投げま
した。
・・・・・・ああぁああ、お父さん・・・・、緒方さんにはボクの助けなど皆無でした。
緒方さん、サメと取っ組み合いのケンカを始めました。


(19)
──大自然と人間の熱い戦い
そんなキャッチフレーズが、ボクの脳裏にとっさに浮かびあがります。
でも、その戦いの結末をボクは見届けることは出来ませんでした。
サメのヒレに噛みついた緒方さんは、ボロボロになり逃げていくサメに
懸命にしがみついたまま、
「フカヒレ──!、キャビア──!」
とだけ叫ぶと、キラリと海の彼方に光り輝き、そのまま姿が見えなくなりました。
「緒方さん、キャビアに出来るサメが生息するのはカスピ海沿岸です」
ボクはそっと教えてあげました。(←心の中で)
ボクは、このメンバーで出かけるのは、もうこれっきりにしようと固く強く
心に誓いました。
・・・・・・ああぁあああ、お父さん・・・・、あっという間に陽が暮れて辺り一面の海
が金色に染まりました。
心和む風景だとは思うんですが、生憎ボクの心の中はブリザードが吹き荒れて
いて、イマイチ感動できません。
ある意味で今年は、とても思い出残る印象深い夏になりそうです。

・・・・・お父さん、南の空に一番星が見えます。
なぜか、その光がボクの目にとても沁みるんです。



・・・・・・ううっ・・・・・早く家に帰りたい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあぁ。(←溜息)

(おかっぱの国から2003・夏ノ巻  完)


(20)
<おかっぱの国から2003・秋の巻>

(1)
久しぶりに我が塔矢家では親子三人が揃い、静かな秋の日を楽しんでます。
都会の木の葉が赤や黄色、そして茶色に色づいて、秋を通り越して冬がすぐ近くに
佇んでいる気配すら感じます。
今年は夏や秋が短いようですね。

今日は恒例の研究会の日ですが、少し趣向を変えて場を庭内に移すことに
なりました。
ボクの家の庭には大きな紅葉の木があり、葉が真っ赤に染まってとても綺麗です。
その木の下にゴザを敷いて、お父さんや門下生達が碁を打つのです。
深紅の紅葉のはらはらと風に舞うなかで碁を打つ・・・・・・絵になる風景だと思います。
爽やかな秋風が庭を吹きぬける中、お父さんが碁盤前に座り、研究会が始まった
ちょうどその時です。

お父さんの首のえり口に、紅葉の木から毛虫がポトリと落ちるのをボクは目撃
しましたっ!
でも真剣に門下生達と碁の検討をしているお父さんは、その事に気付いていない
ようです。いえ・・・、お父さんはわかっているようで、身体をプルプルと小刻みに
震わし、眉毛をビクビクと微妙に動かしています。
ああ、そうなんですね。
元名人という名に恥じない立ち振る舞いはしまいと思い、耐えているんですね。
お父さんがそのようにされるのなら、ボクもこの目で見たことは忘れましょう。
だけど顔中に脂汗をかき、ゴザにカリカリと爪をたてている姿・・・・・・・。
ボクは見るに耐えませんっ。

──お父さん男はツライですね・・・・・。


(21)
(2)
しばらく研究会は続くと、どこからとなく芋の焼けるイイ匂いがしてきました。
辺りを探ると、お母さんが庭の落ち葉などを集めて火をつけて芋を焼き、
「皆さん、少し手を休めてはいかが。お茶にしましょう」
などと、ノー天気な提案をしました。
「はいはいはああ〜い! そうしましょったら、そーしましょ! 」
さっそく芦原さんが、金ちゃん走りで焚き火のそばに一番乗りで行きました。
他の門下生達も席を離れるので、仕方なくボクも付き合う事にしました。
焼き芋はほど良く焼けていて、ホクホクして美味しいです。
うーん、芋は金時が最高ですねえ。

―――!
なぜかどこからともなく魚が焼ける匂いもします。気のせいでしょうか?
いえ、気のせいじゃなく確かにこの匂いは焼き魚です。

はうっ!?
いつの間にか木の枝に刺されたシシャモが焚火に当てられ、じゅ〜と香ばしい
音をたてながらイイ焼き具合になっています。
そのシシャモを手にしたのは・・・・・・あああ・・・・・・緒方さんでした。
田舎のお母さんが送ってくれたシシャモを、なんでボクの家の庭でわざわざ
焼くんですかっ!?
ったく、いいかげんにしてください!

ははうっ!?
こっ、今度は緒方さんの横で芦原さんが餅を鉄串にさして焼いてます。
どこから餅を持ってきたんですかあああっ?


(22)
(3)
そこへ、お母さんは笑顔で「おかわりはいかが」と、お皿に餅をのっけて
来ました。犯人は、お母さんですか・・・・・。
お父さん、ちょっと何か一言お母さんに言ってください。
今日はあくまでも研究会の日なので、ハメを外しすぎるのはよくないと。

はううっ・・・・・・・・お父さん、一緒になってスルメイカを焚火であぶってるぅ。
ああああああ。(←涙がキラリ)

しかもその横で緒方さんが、お隣の佐藤さん家の猫のタマにシシャモを
奪われて、必死になってタマの後を追っかけています。
緒方さん・・・・・・・・。(←またまた涙がキラキラリ)
あっ、お母さん! サンマまで焼いちゃマズイでしょ!
うわあ、黒々とした煙がもくもくと沢山出てきました。
近所迷惑ですよぉ、やめてくださああ──いっ!!
―――!?
なにか家の外が賑やかです、どうしたのでしょうか?
あれれ、ボクの家のほうへ消防車が猛スピードで止まりました。
まっ、まさかね・・・と思った瞬間、勢いよく水がボク達めがけて
ぶちかまけられました!!!

近所の人が火事だと勘違いして、消防署に通報したもようです。
お父さんやお母さん。そして他の人達は地面に突っ伏して倒れています。
無論、ボクも頭から足先までずぶ濡れです。
ぶっ、ぶっ、ぶえっつくしょん!!
うう〜寒い・・・・・・・・・冬は・・・もうすぐですね・・・・。(←涙と一緒に鼻水もキラリ)


(おかっぱの国から2003・秋ノ巻   完)



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