トーヤアキラの一日 19
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ヒカルは、ずっと熱心に自分の話を聞いているアキラに対して、思い出したように聞いて来た。
「そういや、塔矢。別に具合は悪くないのか?」
アキラがうなずくと、ホッとしたように微笑み、すかさず聞いてくる。
「それでさ、その後なんだよ。実戦ではそこでかわして来たんだけど、塔矢はどう思う?」
「えっ?」
「一見、良い一手に見えるよな?」
「えっと、実戦でのその先の展開は知らないけど、色々な場合に備えて、ボクなら内から
ノゾいて様子を見るかな。その方が結局は足が早いし、隅に対しての睨みも利くと思う」
ヒカルは我が意を得たりとばかりにアキラを指差しながら
「だろ?な?そうだよな?やっぱりなぁ!塔矢ならそう言うと思ってたんだ!!」
と言って、満足そうにポテトを口に放り込む。
アキラは、ヒカルの期待に応えられたような気がして、嬉しさと恥ずかしさでまた顔が熱く
なるのがわかるが、ヒカルから視線を逸らすことはせず、じっと見つめている。
「ところで、お前の用事って何?」
「えっ?いや、別に、その、キミと碁の話がしたいと思って・・・・」
「やっぱお前も?俺もさ〜お前の意見が聞きたかったんだよな。同じ事考えてたんだな、ハハ」
「・・・・・・・・」
「やっぱりさ、お前と碁の話をするのはいいよな。ツーと言えばカー、っつうの?ヘヘヘ」
「・・・・・・・・」
「碁会所はちょっとアレだけどさ、時々こうやって碁の話したいよな」
そう言ってヒカルはすぼめた口にストローを咥えてコーラをグイグイと飲む。
飲みながら上目遣いでアキラを見て、不安そうな表情に変わった。
「あ、いや・・・4月まで来ない、とか言ったのはオレだしさ・・・・。ひょっとして怒ってる?」
「えっ?」
「だって、怖い顔して睨んでるからさぁ」
「そ、そんな・・・・」
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