検討編 19
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「進藤、明日、ここに来れるか?放課後にでも。待ってるから。」
「え?」
呼び止められて振り返ったヒカルが困惑したように顔を紅くさせる。
「えっ…とぉ…」
「…なんだ、その顔は。何を期待してるんだ、キミは。」
ムッとした声でアキラは続ける。
「検討だよ。今日、しそびれただろう?それとも何か用事でもあるのか?」
「いや、ねぇけど…オマエって…ホント、しつこい…」
「進藤っ!」
思わず声を荒げてしまったアキラは、はっと気付いて、抑えた声で言う。
「来るのか、来ないのか。」
「…行くよ。」
そう応えたヒカルは、にこっと笑って続けて尋ねた。
「明日だけじゃなくて、その後も行っていい?」
「え…」
「もっとおまえと打ちたいし。」
思いがけない事を言われて、一瞬呆然としたアキラは、信じられない思いで返答を返す。
「…ああ。うん。ボクもキミと打ちたい。」
「よかった!」
無邪気に嬉しそうに笑ったその顔が、何だか急に眩しく見えて、アキラは目を細めた。
「塔矢、」
なに、と聞き返す間もなく、手を引き寄せられる。
そしてまた、唇が重ねられる。
もう、今日何度目だかもわからない感触に、それでもまだ眩暈がする。
そっと触れていた唇が離れていくのが名残惜しいとさえ思った。
ぼうっとしているアキラに、ヒカルはにこっと笑いかけ、
「じゃあ、また明日な!バイバイ!」
そう言って満面の笑みを見せてから、ヒカルは駅へ向かって走って行った。
赤い顔で口元を押さえたまま、アキラはその後姿を見送っていた。
検討編・終わり
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