無題 第2部 19
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せっかく誘ってくれたのに、イヤな思いをさせて申し訳なかったな、とアキラは思った。
他の人間に疎まれるのはいいとしても、間に入った進藤には悪い事をした。
殺風景なアパートに帰り、コンビニで買ってきた弁当を温めて食べながら、アキラはふと、
ヒカルたちがどうしているだろうと思いを馳せた。
―きっと、楽しそうに鍋をつついているんだろうな。
勝手に鍋を荒らして年嵩の少年(多分、彼が伊角だ)にたしなめられているヒカルの様子が、
容易に想像できた。
―それとも、案外、鍋奉行になって仕切るタイプかな。
「ダメだよ、まだそこ煮えてねーよ」
「かき回すなよ、不味くなるじゃねーか」、なーんてね。
そんな姿を想像して、アキラはクスクス笑った。
だが自分の笑い声がガランとした部屋に響いて、アキラはまた空しくなった。
急に、和谷という少年の自分を見る時の険のある目つきが思い出されて、アキラは大きな溜息
をついた。普段なら誰がどんな目で自分を見ていようとあまり気にした事などなかったのに、
なぜか彼の険悪な目つきが急に気になった。
―嫌われるような事をした覚えはないんだけどな。
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