裏階段 三谷編 19


(19)
その夜、伯父は人を人とも思わない扱いでオレを抱いた。
伯父が何に追い込まれていたのかオレは知らない。伯父にその理由を聞く事も出来なかった。
その最中に伯父が突然の心臓発作で倒れたからだ。
「お前は誰にも渡さん。あいつには…」
自分の胸を掻きむしりこちらの首を絞めようと手を伸ばして来た。だが首に絡み付いて来た
その指に力が入る事はなかった。
緩んでいたヒモからようやく手首を引き抜き、濡れた土嚢のように重い伯父の体の下から
這い出てしばらくぼんゃりと壁にもたれて動かぬ伯父を眺めていた。
元々不健康にどす黒かった皮膚がさらに人ではない色に落ちていった。
それまで自分が着ていたシャツは伯父の手によって断片化してしまっていたので抽き出しから
一番上にあった物を出してはおり、ズボンを履いてのろのろと部屋から出た。
伯母は昨日からどこかへ出ていってしまっていた。
電話をかけるというより誰か人に知らせなければと思っていた。
隣家に行こうと玄関から裸足で外に出たとき、これから訪ねようとしていた
その人が表通りから門を開けて入ってくるところだった。
「…どうかしたのか?」
人に向けられる人の目と人の声とは、こういうものなのかと思った。
葬儀の中で久しぶりに再開した実の父親でさえそれを与えてはくれなかったというのに。
「わたしのところへ来るかい?」
別室で一人で座っていた自分にかけられたその人の言葉を理解するのには少し時間がかかった。



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