sai包囲網 19


(19)
 『卍くずし』。浮き上がった自分の体重がかかることによって更に深
く抉られ、新たに襲って来た快楽の波に、ヒカルは狂乱した。
「あぁん、やぁ・・・」
「進藤、進藤」
「あっ、あぁ!」
 それからどのくらい経ったのか、時間の感覚さえ分からなくなるほど
蹂躪され尽くされたヒカルは、半ば意識が飛び始めていた。理不尽に与
えられる快感。戒められ、いまだ達することのできない苦痛。全てがど
うでも良くなって来る。
「はぁ、あ・・・ん」
 涙の混じったすっかり掠れた声が痛々しいくらいだ。良く日の差す明
るい部屋で、ただ一人のライバルと思っていた相手に抱かれ、それに感
じて女のように喘いで、泣き叫んで。ヒカルには、もうアキラに力なく
縋りつくくらいしかできない。
「進藤、saiは君か?」
 何度目かの問いに、ヒカルは頭を仰け反らせて、佐為を探した。
 アキラの肩越し、涙で滲んだ視界に白い影がぼんやりと映っている。
気配で、ヒカルにはそれが佐為だと分かった。
『佐為。お前のことは、誰にも、言わないからな。また、塔矢先生と、
絶対打たせてやるから、だから、心配なんて、するなよ・・・』
 こんな目に遭いながらも、自分のことより先に私のことを想ってくれ
るのですか?佐為は手に持った扇子を折れるくらい強く握り締めた。
 唯一無二の相手への愛しさと、アキラへのやり場のない怒り、そして、
ヒカルを助けることさえできない我が身の恨めしさ。ただ無言で唇を噛
み締める佐為の表情を、ヒカルはもう見ることができなかった・・・。


End



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