守って!イゴレンジャー 19


(19)
ヒカルとアキラが検問にひっかかる三十分ほど前、東京三菱銀行の屋上から
ヘリコプターが一機、重大な任務を背負って飛び立っていた。乗組員はパイロット一名、
白川七段、日本棋院職員二名、記録係(次期ヒロイン)の計五名。彼らの背負った任務は二つ。
一つは戦いの棋譜を付けること、もう一つは井上さんmeの暴走を止めることだ。
「無事に離陸したか…」
総司令部詰めの職員が安堵の溜息を漏らした。
「まだ油断は禁物です。井上さんmeとフェーン現象の因果関係をNASAに気付かれたら
 大変な事になりますよ!」
「そうなると気象庁が黙っちゃいないぞ」
「永田町からも査察が入るかもしれん…厄介だな」
「──とにかくあとは現場の人間に任せるしかない」
さて、中継地点A・杉の木のてっぺんでは───。
「悪いけどブルーの肩を持つ気にはなれないな、オレ」
「ボクも。話を聞いた限りじゃブルーの過失100%だ」
「…オレも自分でそう思うよ…」
「なら決まりだな」
やけに明るい和谷の声を伊角は不審がる。
「……?」
「や、だってさ、もうしょうがないじゃん。黙って井上さんmeの制裁を受けてきなよ」
「えええッ?」
「そうだよ。ブルーの息の根を止めない限り井上さんmeはうろうろと彷徨い続けるよ。
 このままだと全世界を巻き込んで火の七日間戦争に突入だね」
「つーわけで、人類を救う為に一肌脱いでくれ、ブルー」
「ちょっと待った!お前ら嘘だろお──ヲヲヲヲヲッ!!!」
全人類を救う為、あわれ生贄として仲間に突き落とされた伊角。
その目の前に、しゅうしゅうと解析不能な音を発しながらゆっくりと近付いてくる
井上さんmeの姿があった。
『見つけたぞ、小僧…屍を晒して孫に詫びるがいい…』
「ぎゃああああああ!」
イゴブルー、絶体絶命の大ピンチ!?
と、その時。
「伊角君!死んだ真似をするんだ!!」
───パラパラパラ。杉林の向こうから聞こえるプロペラ音。
見上げるとヘリから吊るされた鉄製の梯子に白川七段が掴まり、
伊角に向かって大声で叫んでいるではないか!
「井上さんmeは動かない人間と死体の区別がつかないんだ!早く死んだ真似を!」
急な展開に伊角はパニック状態!それでも言われたとおりに地面に突っ伏し、死体になりすました。
途端、井上さんmeの動きが止まる。
『…目標殲滅。任務完了…』
──プツン。
地面の上に転がった井上さんmeの姿は昼寝をしている老人のようで微笑ましいのだが、
これはまぎれもなくレッドだけに忠実な戦士型殺人兵器なのだ。
最終回まであと2回!好手戦隊・イゴレンジャー!!



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