ピングー 19


(19)
緒方は力なく、背を浴室の壁に預けたヒカルを見下ろした。
激しい情事の余韻に、目元まで薄赤にそめているが、視線はどこも見ていないよう
だった。
体を床に投げ出したような、そのしどけない様がまた色っぽくて、緒方は、進藤ヒカルの
中にいれたままの己の一部が、不満を訴えるのを聞いた。
だが、これ以上、この少年を追いつめては、ここでそうそうにゲームオーバーだ。
面白半分に年下の棋士相手、しかも男に猛ってしまった自分をおかしく感じながら、
緒方はゆっくりと固まりかけた自身の肉棒を引き抜いた。
一度止めたシャワーを、もう一度出して、今度は丁寧にヒカルの体を洗ってやる。
緒方は、シャワーを止め、バスタオルを取って、ヒカルと自分の体を大ざっぱに
拭くと、再びヒカルを抱え上げ
寝室へと運ぶ。
「しばらく、そこで休んでろ」
柔らかな布団にヒカルを裸のままくるんで寝かせ、自分も着替えると、湯を沸かし、
冷蔵庫をあさって簡単な朝食の用意をする。
普段は、朝食など外食で軽くすませるのだが、この状態の進藤ヒカルを連れて、
出歩くわけにもいくまい。
ジャッと、フライパンに油がひかれる音がする。目玉焼きにしようと思った卵は、
慣れないせいか黄身が見事に崩れたので、そのままスクランブルエッグにしてしまった。
あいにく、野菜類の買い置きなど一切ない。
黄色いスクランブルエッグと、トーストされた厚切り食パン。そして砂糖が申し訳
程度に入ったコーヒーという、無味乾燥な朝食が、灰色の部屋のテーブルに並んだ。
「進藤、起きれるか?」
新しいワイシャツを持って、寝室に迎えに入る。疲れからの睡魔に襲われていたの
だろう進藤ヒカルを無理矢理おこした。
恨みがましい目で見られたが、そんなのは女で慣れている。



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