失着点・龍界編 19


(19)
次の日、前日に続いていろいろな検査を終え、ヒカルは病室に戻ろうとした。
すると廊下の長椅子に緒方が座って待っていた。
「ちょっといいかな、進藤…」
ヒカルはかつて見た事がある緒方のその視線にため息をついた。
…やはり、この人だけは誤魔化す事が出来ないかったか…。そう思ったのだ。
緒方はヒカルを人が来ない屋上に連れて行った。
「…何があった。」
屋上の片隅で、タバコに火をつけながら緒方は尋ねて来た。ヒカルは唇を
噛んで、返事をする代わりに手首に触れた。
緒方はタバコを銜えるとその手を取り、リストバンドを下げた。細く白い
手首に禍々しく残った、指の痕のような痣。
「…相手は…?」
眼鏡の奥で、色の薄い瞳がさらに鋭さを増して光ったように見える。
ヒカルはただ、首を横に振るしか出来なかった。
「まさか、前と同じ相手じゃないだろうな。」
「違う…今度は本当に…知らない相手…。最後までやられたわけじゃ
ないけど…だけど…」
答えながら、あの時の恐怖が蘇って膝がガクガク震え、顔色が白くなって
行くのを感じた。そんなヒカルを見て、思わず緒方が肩に触れようと
するが、ヒカルは一歩下がった。
それを予測していたように緒方がされに足を踏み出し、ヒカルを捕らえて
しっかりと抱き締める。
緒方の大きな手が頭に乗せられ、長い指で髪を優しく梳かれると、
やがてヒカルは安心したように落ち着きを取り戻した。



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