少年サイダー、夏カシム 19


(19)
外へ出ると虫たちが忙しなく鳴いていた。いくらか気温が上がり、蒸し暑くなっている。
のどの渇きを感じた和谷は、ふと手に持っていたペットボトルを見つめた。
『少年サイダー』と商品名が書かれた横に、小さくキャッチコピーが書かれている。
「“少年時代に飲んだ、あの懐かしい味を”、か・・・」
和谷はペットボトルのふたを開けると、その中身を一気に飲み干した。
炭酸の抜けたぬるいそれは、さっきの爽やかではじけるような味とは違い、ベタベタするような甘い砂糖水のようだった。それなのに後味は思ったよりも爽やかだ。
和谷はふと、この飲み物とヒカルとが重なるように見えた。
出会った頃のやんちゃではじけるような活発な少年は、時間とともに砂糖水のように甘くなった。
その甘さはしつこいものではなく、癖になるような爽やかな甘さで、一度味わうと止められない。そして味わった後も甘い味と香りを体の中に刻み込んでくっきりと跡を残す。
見た目は水と同じで無害そうなのに、甘い香りをいつまでも漂わせて離さないところなんてそっくりだ。
最悪だ。和谷は笑った。ラムネの香りが口からなかなか消えない。それと同じようにヒカルとのあの行為も忘れられずにいた。



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