スノウ・ライト 19
(19)
オガタはふん、と鼻で笑って王子の怒りを受け流しました。
「アキラ王子、勝負の世界は非情なものだ。キミも十分わかっているんじゃないか?」
王子は御付きをにらみ付けました。空気に激しい火花が散ります。
しがない小人の身分ではとうてい間に入ることなど出来ないので、小人たちは口を挟まず
ただ見ていました。
「だいたいキミは少し自己中心的過ぎる。それに自分の立場がわかっていない」
「何がおっしゃりたいのですか! ボクは王子ですよ!」
「ふん、現実ではたかが三段ではないか。俺は二冠だぞ? なのに上座に座りやがって」
『お、緒方先生、セリフが違います!』
「だいたい何でこんな子供だましの劇に付き合わなくちゃいけないんだ。どうせなら
25禁の劇に出たかったぜ。そしたら大人の魅力をたっぷりと演じてやれるのに」
『緒方先生! 劇を続けてくださいっ』
「しかし進藤、なかなかかわいいじゃないか。アキラくんのキスよりも俺のキスのほうが
ばっちり目を覚ますことが出来るぜ」
『わあ! 緒方先生! おやめください!』
「ああ、もう! 聞いてりゃ何なんだよ! おまえら劇をする気がないのかよ!
ナレーションの人も困ってるだろ! ほら続けろよっ。ったく、もう起きちゃったよ。
“ヒカル姫は目を覚ました”ってところからやるぞ!」
『ヒ、ヒカル姫は目を、さ、覚ましました……アキラ王子は』
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