失着点・展界編 19


(19)
タクシーは、なかなか掴まらなかった。ガードレール伝いにふらふら歩く
ジーンズ姿の中高校生風の子供を嫌ったのかもしれない。ヒカル自身歩くのが
やっとで目ざとく走って来る空車のランプをうまく見つけられない。
そのうち面倒臭くなって来た。このまま歩けば駅まですぐだったが、もはや
家に帰る事自体放棄したくなっていた。
アキラのアパートも、アキラが居なければ何の意味も持たない空虚な場所だ。
痛みは限界を超えたのか痺れしまっていてよくわからない。ただ経験から
すれば、波があって、後でぶり返してくることは間違いなかった。
「…疲れた…。」
ヒカルは元公衆電話があったらしき一角にもたれてひと休みした。
駅に向かう人々が行き交う中、一人の中年男性がこちらを見ている。
一瞬、ヒカルはギクリとした。棋院関係の人かもしれない。あるいは、
碁会所の常連客かもしれない。そういう人に呼び止められたら厄介だと
思ったのだ。その男はすーっとこちらにやって来て、指を1本立てた。
「…?」
「君…いくら?…もしかしてこれくらい?」
指が3本になった。ヒカルは意味を悟ってカッとなった。
「君のランクなら、これだけ出しても良いよ。」
男は手を広げて見せた。ヒカルは無理にも早足でそこから立ち去った。
男が小さく舌打ちをする。
たまらなく惨めだった。
プロ棋士・進藤ヒカルが、援助交際目当てのガキと間違えられたのだ。



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