社妄想(仮) 19


(19)
どこの階を探してもやはりヒカルの姿は見えない。
もう午後の対局も開始する頃だ。
何をやっているんだ、進藤……!
アキラは思わず壁を殴りつけていた。
その瞬間。
アキラはまだ棋院の中に探していない場所があった事に気付いた。
少し前に、二人だけで落ち着いて話がしたい時に場所として最適だと、ヒカルが提案した所だ。
本当は入っちゃ駄目だけどな、といってヒカルは肩を竦めて笑っていた。
アキラがいいんじゃないか、と言うと、ただでさえ大きい目を見開いて驚いていたのも憶えている。
アキラは慌ててエレベーターのボタンを押し、到着を待ったが、
それすら待てなくなり、階段を駆け上がった。
走りながらアキラは思った。
いつもこうだ。
自分は、いつもヒカルに振り回されている。
対局に遅れようが、それで負けてしまおうが、自分には関係無い筈なのに。
───いや、もう関係が無いとは言えない。
色々な意味で、ヒカルはアキラにとって必要な存在だった。
その彼が、こんな所で、こんな事で不戦敗になったりするのはアキラ自身が許せない。
アキラは、拳を強く握るとただひたすら階段を駆け上った。



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