敗着 19 - 20
(19)
「コトリ」
碁笥を碁盤に置く音がした。
――今日も進藤は来なかったな
アキラは窓の方を向いた。既に日は落ち、外は真っ暗だった。
「おお、アキラ先生。今日も棋譜並べですか?」
「広瀬さん、今日は遅かったじゃない」市河の声が聞こえる。
傍らに立った広瀬に「ええ、まあ・・・」と曖昧に頷く。
「それはそうと前に来てた進藤くん、緒方先生とどこかへ行ったよ」
「――え・・・?」
瞬時に体が硬直した。
「用事で近くまで来ててね、二人が一緒に歩いているところが見えたんだ。あれは何処へ行ったんだろうね」
「緒方先生と?進藤クン?棋院に用事かしら・・・?」
市河の声が耳に入るか入らないかのうちに派手に音をたてて立ちあがると、アキラは碁会所を飛び出していた。
「い・・・たい・・・」吐息にまじって声が聞こえる。
思いのほか進藤の中は狭かった。
「進藤、力を抜け・・・きつい、」
脂汗をじっとりと滲ませた体に手の平が吸い付く。
潤滑油が塗ってあるとはいえ、締め付けてくる力は半端ではなかった。
それでも多少は滑り、なんとか腰を進めることができる。
顔を歪め必死に歯を食いしばっているのを見て、胸の突起に舌を這わせてやる。
「っあ・・・」
体を仰け反らせ弱々しくしがみついてくると、爪を立てて自分の体を引き剥がそうとしている。
進藤の腰を自分の動きに合わせて動かし、少しでも力を抜かせようとした。
「――ん、っあ、おがた、せんせ・・・っ!」
まとわりついてくる腕にくちづけ囁く。「力を抜くんだ進藤・・・お前も辛いぞ・・・」
額に汗で張りついている前髪をかきあげ、そっとキスするとその唇は乾いていた。幾筋もの涙の跡がついた頬を、また新たな涙が濡らしている。
(参ったな・・・)
体勢を変え進藤の脚を肩に掛けると、少し位置をずらせ股間に目を遣った。
太腿の付け根を水着の跡がぐるりと囲み、下腹部と色を異にしている。
そのまま内壁を擦り上げるようにして貫く。
「うあっ」
進藤の口から初めて歓喜の声が漏れた。
(20)
「・・・・、っあ、ああっ!」
進藤の喘ぎ声が部屋に響く。ベッドが軋み体をバウンドさせる。
幾分か楽に動けるようになったそこは、我を忘れるほどの快感をもたらしてくれた。
締めつけてくる筋肉の圧迫感と溶けそうな程に熱い内部。独特の粘膜の感触が迎え入れた物体に張り付いてくる。
自分の吐く息と泣きじゃくる進藤の声がない交ぜになり、リズミカルに呼応していく。
「おがたせんせぇ、っせんせい・・・・!」
夢中で掻き抱いてくる進藤を抱き締めると唇を合わせ互いに求め合う。
「―――しんどう・・・・」
舌を絡ませ合い唇を離すとまた合わせる。二人の呼吸と声がもつれ一気に高みへ達した。
「ああ―――――――――――――!!」
進藤のものが弾け白い体液が散った。
「・・・・、は・・・・」
自分の肩が揺れているのが分かる。そのまま体が倒れるのに任せ、進藤に折り重なった。
「・・・・キツかったか・・・・?」
ぐったりと体を投げ出し大きく息を切らせている進藤に尋ねた。
「ん・・・・」
こちらを見た飴玉のような目が「ううん」と言っている。濡れた睫毛が僅かに瞼に貼りつき、目を開けにくくしているようだ。
見詰め合い、どちらからともなく唇を重ねると、結合したままの部分がまた熱を帯びてきた。
今度はもう止められなかった。ベッドに足を突っ張り、狂ったように奥へと突き進む。
「ぁあ、ああっ、イイッ、イイ・・・・っ!」
意味が分かって言っているのか違うのか、進藤は女のような声を出して歎いている。
「・・・・腰を使え、・・・もっとヨクなる・・・・、」
教えると素直に従い腰を振ってくる。結合部の粘膜が擦れ合い引き出され、また戻される。
一度目に出したザーメンが入り口付近で泡立ち、抵抗を少なくしていた。
為すがままにされ、後ろを貫かれている進藤は指を噛み声を殺している。
「 、啼いていいぞ、もっと啼けっ!、」
一層スピードをあげてやると顎をがくがくとさせ二度目の絶頂を迎えた。
耳に進藤の叫び声が残った。
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