失着点 19 - 20


(19)
嗚咽が混じった、砂糖菓子のように甘いヒカルの悲鳴はアキラを十分
満足させた。
「くっ…ううんんっ!!」
アキラもまた、アゴをせり上げ激しく痙攣を起こしたように打ち震え、
3〜4度その状態を繰り返すとヒカルの上に倒れこんだ。
ほとんど目の焦点を失っているヒカルの顔にアキラの汗と黒髪が落ちる。
アキラ自身がビクリと痙攣するとヒカルの狭道がその刺激で痙攣し、
それによって狭道が狭まるとそれに反応してアキラ自身が痙攣する。
二人の体はそうしてしばらくの間一身同体で絶頂感を共有した。
互いの呻き声が呼応するように同調し切なく響きあう。
接合した部分はあらゆる体液が溢れて混じり合い濡れそぼっていた。
そんな状態でもなおもアキラはヒカル自身を扱き続け、
硬さが少しでも残っている間はヒカルの中で動き続けた。
行為を名残り惜しむように。
それに対して意識を失いかけているヒカルはただピクンピクンと物体のように
神経的な反射を繰り返していた。
ヒカル自身が起き上がる兆しは、もうなかった。
動きを止め、ようやく手を離したアキラはヒカルの耳元に唇を寄せて囁いた。
「大好きだよ、…進藤。愛してる…ヒカル…。」
夢と悪夢の境界線上のような渾沌とした意識の中で、ヒカルはそれを聞いた。


(20)
アキラに抱き支えられるようにしてヒカルはシャワーを浴びた。
途中、アキラはシャワーのお湯が口の中に入って来るのもかまわず
ヒカルにキスを求めてきた。
ヒカルが黙ってされるがままにしていたらそのまま
バスルームの壁にヒカルを押し付け、まだ足りないと言うように唇を
貪りながらヒカルの片足を持ち上げて股間に身体を入れて来た。
「…塔矢!」
視線を床に落としたままさすがにヒカルがぶ然として声を荒げると、
「…冗談だよ。…怒らないで。…ごめん…。」
と謝り、身体を離した。おそらく本気だっただろうとヒカルは思った。
バスルームを出るとアキラは自分の身体を拭くのもそこそこに
血の混じった体液で汚れたベッドのシーツを手早く新しいものに替え、
ヒカルを横たわらせた。
そしてキッチンの方からミネラルウォーターと何か錠剤らしきものを
持って来て、それらを口に含むとヒカルに口移しで飲ませた。
「…何?」
「痛み止めだよ。たぶん、しばらくは続くから…。」
確かに、時間を追う毎にその箇所が燃えるように熱く疼いて来ていた。
シャワーの前に一度激しく脱水症状を起こしてトイレに入ったのだが、
泣きたくなるくらい痛みが激しかった。



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