Shangri-La第2章 19 - 21
(19)
「――そんなに、欲しいのか?」
背中からゆっくりと撫で回すと、アキラは動きを止め、こくりと頷いた。
「進藤じゃなきゃダメなんだろう?お前がそう言ったじゃないか?」
その言葉にアキラは一瞬身を固くすると顔を起こし
絶望を灯した瞳で緒方を見据えた。
「何も俺じゃなくたって……お前を抱きたいと思うヤツは沢山居るだろう。
だいいち他の男のモノに手を出して、トラブっても面倒だからな…」
緒方はサイドテーブルに手を伸ばし、煙草に火を点けアキラの表情を窺った。
確かに、緒方との関係を清算したときの言葉の中に
そんなようなニュアンスのものが合ったとは思う。
だが、今日の緒方は自分を受け入れてくれている、そう思っていた。
いつだって、厳しく接してはいても根本はいつだって優しくしてくれたし
アキラの小さなわがままを叶えてくれたのは、両親ではなく緒方だった。
(20)
今、自分が人肌に飢えているのは真実だと――それはもう、認めざるを得ない。
ヒカルの多忙の理由を理解している以上、逢いたいとねだることは出来ず
ずっと身体を持て余したままだからだ。
だが、ヒカルの他に誰か、と言ったところで、肌を合わせる相手を
そう簡単に変えることも、出来ない。
緒方なら近しいし、以前の事もあるから抵抗は全くないのだが…
目の前で悠然と銜え煙草でアキラを見ているのは、
これ以上の事をするつもりがないのか、それとも試されているのか。
アキラは緒方の口元から灰の伸びた煙草を奪って灰皿に捻じ込むと
緒方の首に絡みつくように抱きつき、耳元で囁いた。
「緒方さん、抱いて……お願い…」
否定の言葉を聞きたくなくて、そのまま緒方の唇を塞ぎ
舌を絡めて言葉を奪うと、煙草の匂いも味も、濃くアキラの中に漂った。
その風味に酔いながら、アキラは腰を浮かせて
緒方の先端を自ら入り口にあてがった。
(21)
「こら、アキラ、止めないか」
病的なまでに行為を急くアキラを制すのはなかなかに大変で
それでもなんとかアキラを抑えると、アキラは
負の感情が全て入り交じったような表情で緒方をじっと見た。
「そんな事したら、いくら何でも、辛いだろう…」
両手で顔を挟み、子供に言い含めるようにゆっくり話すと
アキラの顔が悲しげに歪み、緒方の胸に埋められた。
「…それとも、痛いのが良くなったか?ん?」
そっと胸元を弄ってやりながら訊ねると、暫くしてアキラは
緒方にしがみついたまま、微かに首を降った。
「そうか…なら、そこに伏せなさい」
アキラは驚いたように顔を上げて緒方を見つめてから
そっと身体を離して、言われた通りベッドに伏せて両脚を開き、
腰を高く上げて緒方を待った。
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