初めての体験 院生師範 篠田


(19)
 ヒカルは、自分のシステム手帳をじっと見つめて考えていた。名前が幾つか並んでいる。
『・・・偏っている。』と、ヒカルは思った。一人例外はいるが、それ以外は全て、若手の名前だ。もっと視野を広げなければ・・・。強くなるためには、選り好みをしていてはだめだということは、倉田で勉強済みだ。
 手始めに、よく知っているあの人からにしようか。

 院生が帰った後の棋院の大広間、篠田も帰ろうと腰を上ようとしたとき、入り口に人影が見えた。首だけだして、こっちを覗き込んでいる。篠田はその顔をよく知っていた。
 「進藤君。どうしたんだね?」
今日は日曜日。プロであるヒカルの手合いの日ではない。ヒカルは訝しんでいる篠田の顔を照れくさそうに見た。
「篠田先生・・・。オレ、先生にお礼を言おうと思って。」
「お礼?何のことだね?」
ヒカルは続けて言った。
「オレがプロになれたのは先生のご指導のおかげです。」
「いや、それは進藤君が、がんばったからだよ。」
篠田はヒカルの言葉を嬉しく思った。眼鏡の奥から優しい目を細めてヒカルを見た。
院生師範の篠田はやんちゃで明るいヒカルを目にかけていた。ヒカルは篠田の前に正座した。
そして、
「先生のおかげです。本当にありがとうございます。」
と、言ってヒカルは篠田の手を両手で握った。

 「し・・・進藤君!?」
篠田は狼狽えた。ヒカルが篠田の掌を指でくすぐったり、撫でたりしたのだ。
そんな篠田にヒカルは顔を近づけて言った。篠田の知っているヒカルではなかった。
「せんせい・・・お礼がしたいんです・・・」
ヒカルの唇が妖しく動く。ヒカルの瞳に囚われたように、篠田は動けなくなった。


(20)
 両肘で体を支えている体勢の篠田にのしかかる。そして、篠田の眼鏡を外して、あえいでいるその唇に深く口づける。ヒカルの舌が篠田の中に差し込まれた。
ヒカルは篠田の上顎を舐めたり、舌を吸ったりした。ヒカルの舌と唇が篠田の口の中を愛撫し続けた。
 ヒカルの指がネクタイをはずし、シャツのボタンを一つずつはずしていく。
アンダーシャツをズボンから引き出して、そのまま、まくり上げた。
「先生・・・オレの次の手わかる?」
ヒカルがクスクスと笑いながら言った。ヒカルの舌が篠田の首筋を舐め、鎖骨へと滑っていき、それから乳首を舐めた。篠田の体がふるえた。
 「し・・・進藤・・・やめなさい・・・」
篠田が呻いた。ヒカルの手が篠田の股間へと伸びた。
 「先生・・・やめて欲しくないんでしょ?そうだよね?」
ヒカルが篠田のズボンのファスナーをおろして、中身を取り出した。
それはもう立ち上がり始めていた。
 篠田は必死で誘惑と闘った。ヒカルが与える快感に耐えようとした。
院生は篠田にとって、自分の子供も同然だ。いくら何でもこんなこと・・・!!
 ヒカルは、篠田をさすっていたが、なかなか思うようにならない篠田に焦れた。
 「先生・・・。オレのこと嫌い?」
ヒカルが潤んだ瞳で篠田を見つめた。涙をにじませ、声には悲しみを含んでいた。
その目を見た瞬間、篠田は陥落した。ほんの少し残っていた理性を完全に手放してしまった。
 ヒカルは満足げに笑って、固まったままの篠田から、一旦離れた。そして、服を全部脱ぎ捨てて、鞄の中から、何か液体の入った小さな瓶をとりだした。
ヒカルは小瓶を傾けて、中の液体を手に塗った。
 ヒカルは、篠田に見えるように大きく足を広げると、指を後ろの入り口に差し込んだ。
「ああぁん」
ヒカルは自分が与える刺激に耐えかねて、あえいだ。指を一本ずつ増やしていく。
「あ・・・あん・・・ンン・・・ああん」
指が出入を繰り返す、そのたびにいやらしい音がした。後ろをなぶりながら、自分で乳首を弄ぶ。口を半開きにして、赤い舌で唇を何度も舐めた。
唾液が口の端から喉元へと伝った。
 そんなヒカルの嬌態に篠田は完全に堅くそそり立っていた。


(21)
 ヒカルが篠田に跨った。
「・・・し・・・ん・・・ど・・・く・・・ん・・・」
 篠田はヒカルを苦しげに見つめた。
 ヒカルは篠田に笑いかけて囁いた。
「先生・・・すぐ・・・すぐに気持ちよくしてあげるから・・・ね・・・」
そして、篠田自身を持って位置を確かめると、そのまま腰を沈めた。
「うん・・・あぁ!せん・・・せ・・・どう・・・?」
 ヒカルが動くたびに、今まで経験したことがないような快感が押し寄せてくる。
「せんせ・・・いぃ・・・ああ・・・ん・・・くふ・・・」
篠田の頭の中は真っ白になった。
 
 
 
 「あれ?進藤。この篠田先生って誰?」
ヒカルのシステム手帳をめくりながらアキラが訊ねた。
「ああ。塔矢は知らないんだ?棋院の院生師範。」
「ああ・・・。それでいつもと違うページに書いてあるんだ。」
「さすがだよ。一筋縄じゃいかねーんだぜ。でも、おかげで新しい手を
 思いついたけどね。」

 篠田先生・・・指導力はピカイチ!現役時代に対局したかった。・・・おしい。

 ヒカルはクスクスと思い出し笑いをした。日曜日のことを思い出したのだ。
そんなヒカルを見て、アキラは複雑だった。ヒカルが楽しそうに、院生時代を思い出しているように見えたからだ。
 アキラは、院生時代のヒカルをよく知らなかった。ヒカルと思い出を共有できないことを悲しく思い、ぽつりと呟いた。
「ボクも院生だったら・・・進藤と一緒に指導してもらっていたのかな?」
「かもな。そしたらもっと早く塔矢と・・・」
 ヒカルは上目遣いにアキラを見つめて言った。そして、自分の指をアキラの指に絡ませて、アキラの唇にチュッと軽くキスをした。
 そのあまりの可愛らしさに、アキラはたまらずヒカルを押し倒した。

<終>



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