塔矢邸 19 - 21
(19)
「塔…矢…!」
ヒカルが腰を捩ってアキラから離れようとするが、アキラは両手でヒカルの太ももを
しっかり押さえ込んで離れなかった。ヒカルの体内でアキラの指の動きが早められた。
「んんー…」
自分もアキラの体内を指で激しく掻き回した手前、アキラのその行為を強く拒否する事は
出来なかった。ヒカルは抵抗を止めてアキラに身を任せた。
そして体の奥底から熱い何かがせり上がって来そうな感覚がした瞬間、アキラに
ヒカル自身の根元を強く握られた。
「うあっああっ…!!」
体はビクンビクンとほぼ痙攣状態なのにも関わらず射精が出来ず、体内で何かが
逆流する感覚にヒカルは目を見開き呻いた。
アキラの指を銜えた箇所もドクンドクンと熱く波打っていた。
そこからするりとアキラの指が抜け出て、異物感が消えてヒカルはホッと息をついた。
だが、涙混じりにハアハアと呼吸を整えるヒカルの目に、自分の腰をヒカルの腰に重ねようと
姿勢を変えるアキラの様子が映った。
「…塔矢…!ちょ…っと待っ…」
「大丈夫だよ、今のでだいぶ、ほぐれたみたいだから。」
アキラはまだヒカルと同様に荒く息づくように蠢いているヒカルの狭門に自分自身の
先端を宛てがった。
「力を抜いて、進藤…。」
「む、無理だ…よ、指でもあんなに…あ…」
再びそこに広がる鈍い痛みにヒカルは顔を顰めた。
(20)
多少の刺激で慣らされたとはいえ、やはりヒカルの体門は侵入者を拒否して
固くその門を閉ざした。
それを丸太で突き破ろうとするようにアキラは進んで来る。
「い、痛…い…、い…」
「…ボクも痛かったんだよ、進藤…」
アキラにそう言われてしまうとそれ以上ヒカルは泣き言を言えなかった。
ヒカルは必死で声を呑み込み、目を閉じて下肢に力が入らないよう努めた。
根元を掴まれたヒカル自身が痛みで萎えていった。
アキラが少しでも痛みを和らげようとするかのようにその幹を撫で摩る。
そうしながら加圧されてくるアキラの楔はようやく閉ざされていた重い扉を押し開け、
その先端の部分を潜らせた。
「ああーっ…」
その瞬間かつてない程に細胞が引き延ばされる衝撃にヒカルはたまらず悲鳴をあげた。
当然、それはまだほんの始まりでしかない。
「くっ…」
あまりのきつさにアキラにも若干の苦痛を強いたようだが、それでもアキラは
力を緩めようとする気配がなかった。
アキラを受け入れる以上まだまだ痛む箇所は増える事はあっても減る事はないのだ。
冷や汗が全身から吹き出て、ヒカルの額から頬に伝わり落ちた。
前をアキラが摩り続けてはいたが、とてもそんなものでごまかせる痛みでは到底なかった。
「角度が悪いのかも…、進藤、もう少し我慢して…」
無気味な程冷静にアキラはそう判断して、ヒカルの足を抱え込んで
膝が胸に着きそうになるくらいに折り曲げ、上に体を伏せて来た。
(21)
そうしてアキラが再び体重をかけると、さらに奥に進んでくる感触があった。
痛みがさらに広がり、ヒカルはただ唇を噛んで目を閉じ、早くこの悪夢のような時が
過ぎるのを待った。
「もっと力を抜いて、進藤…!」
アキラにそう言われても、これ以上どうしろって言うんだとヒカルは言いたかった。
出来ればやはりアキラにも自分が得たのと同じ快感を味わって欲しい。
その為に我慢している。だけど物理的に限界があるのだ。
アキラの要求に応えきれない自分が情けなくて悲しかった。
「塔…矢、ごめ…ん、ご…め…」
固く閉じたヒカルの目蓋から涙が溢れて一筋ふた筋と、頬を伝わって流れた。
ヒックと、小さくしゃくりあげる。
「…進藤…」
それを見たアキラがゆっくりと腰を引き始めた。
「う…あっ」
激しい異物感が今度は逆方向に腸内を擦り、押し開く感触にヒカルは身震いした。
「謝るのはボクの方だ。…無理強いして悪かった、進藤…」
ヒカルの頬の涙を舌で掬い取りながらアキラは済まなそうに囁き、なるべく
刺激を与えないよう気を遣ってヒカルから抜き出てくれた。
そして舌で時間をかけてその箇所を慰撫してくれた。
細胞が広がり軋んだ灼けるような残痛にヒカルは苦しんだが、アキラの温かい舌が何度も
その箇所を動いて癒してくれた。それが心地よく、恥ずかしかったが嬉しかった。
アキラが思いとどまってくれた事に感謝した。
塔矢邸でそのアキラが再び今、ヤル気満々の瞳でヒカルを見下ろしていた。
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