誘惑 第三部 19 - 22
(19)
「進藤?」
「さっきも思ったけど、塔矢、おまえ、痩せすぎ。」
そう言うと、ムッとしたような顔でアキラがヒカルを睨みあげた。
「こんな状態のおまえ抱いたら、壊れちゃうよ。オレ、おまえを壊しちゃうよ。今なら止められるから。
これ以上やったら歯止めが効かなくなって、おまえを滅茶苦茶にしちゃいそうだ。」
「そのくらいで壊れるほどやわじゃない。」
怒ったような口調でそう言った後、アキラはふわりと腕をヒカルの首に回して引き寄せ、耳元で囁いた。
「キミに壊されるんなら、それこそ本望だ。壊れるくらい激しくして。滅茶苦茶にして。キミの全部を感じ
させて。ボクをキミで一杯にして。」
息の熱さが感じられるくらい間近で、煽るような言葉を囁かれると、身体が熱くなる。鼓動が早く、激しく
なる。下半身に血が集まるのを感じる。
「塔…矢…」
それでも抗おうとするヒカルの唇をアキラが塞いだ。
「だ…めだよ、塔矢っ…!」
「…強情だね。」
逆にヒカルの身体を下にし、跨るような格好で、ヒカルを見下ろして、言った。
「キミが嫌だって言ってもボクはやめるつもりなんかない。」
そして乱暴にヒカルの脚を開き、顔を寄せていく。
「まっ、待てっ、塔矢っ…」
ヒカルの制止など聞き入れる筈もなく、アキラは確かに勃ち上がりかけているヒカルを口に含んだ。
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ヒカルはあっという間にアキラの口の中で弾けた。
放たれたものを当然のように喉を鳴らして飲み込み、ヒカルを上目遣いに見ながら、
「精液は栄養あるってホントかな?」
そう言って、小さく笑いながら口の端に零れたものをペロリと舐め取った。
端整な顔に浮かぶ淫猥な表情にゾクリと心が震える。いや、震えるのは心だけじゃない。
「キミだって、一回出したくらいじゃおさまらないくらいのくせに。」
圧し掛かるようにヒカルの眼前に顔を突きつけながら、勢いを失っていないヒカルを弄る。
「ボクの身体の心配なんかするなよ。それくらいだったらキミをよこせ。
足りなかったのはキミだ。今ボクが欲しいのはキミだ。キミだけだ。」
真っ直ぐに見据える黒い瞳に心を奪われる。ドクン、と心臓が脈打つと同時に、アキラの手の中の
ヒカルが、ぐん、と大きくなる。ヒカルの中の衝動を見透かしたようにアキラが目を細め、
「これでもまだやめるなんて言うの?」
煽り立てるように耳元で囁く。
「とう…」
伸ばしかけたヒカルの腕を振り切るようにアキラは身体を起こす。
「欲しかったら嫌だって言ってもやれって、言ったのはキミの方だ。」
そう言いながらヒカルを見下ろしてにっと笑うと、ヒカルを呑み込むように一気に腰を沈めた。
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「あ、あぁああっーー!!」
アキラの悲鳴にヒカルは慌ててアキラを抱きかかえようとするが、かえってそれがアキラの身体に
新たな刺激を与える。アキラの口からこらえきれない声が上がり、アキラの背が弓なりに反る。
キツく締め付けるアキラの内部に意識を奪われそうになりながら、ヒカルは必死でアキラを気遣う
ように、アキラの腰を支えた。
「とう、や、」
大丈夫か、と問うように名を呼ぶと、それに応えるようにヒカルの上でアキラが首を振る。髪が乱れ、
汗が飛び散る。白い身体が薔薇色に染まっている。
「とうや、」
もう一度呼ぶと、その呼びかけにアキラはきつく閉じていた目を開けヒカルを見下ろしながら、切れ
切れに言う。
「…い……ん、だ……つ…らく、ても…」
言いながらアキラは腰を浮かす。締め付けられながら抜けていく、身体ごと意識を持っていかれそう
な感覚にヒカルが息をのんで耐えると、また、ズンッとアキラの腰が落ちてくる。
「しん、ど、もっ…と……」
ヒカルを強請るように身体を動かすと、アキラの声に苦痛以外の艶がこもる。
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ヒカルの上で声をあげ、夢中で動くアキラがこのままどこかへ行ってしまうような気がして、ヒカルは
急に怖くなって、無理矢理アキラの腕を掴んで引き寄せた。倒れてきたアキラの身体を、逆に下に
組み敷いて、抱き寄せて、抱きしめて、奥深くまで突き入れる。
荒い息も、心臓の音も、飛び散る汗も、密着した肌に感じる熱さも、自分のものもアキラのものも一緒
になって、どっちがどっちのだかわからなくなる。わからないままに、いっそこのまま一つになってしま
えばいい。皮膚と皮膚との境目もわからないくらい、溶け合って一つになりたい。
もっと深く、もっと奥まで突き入れるとアキラの身体が弓なりに反り、ヒカルの頭の上で悲鳴をあげる。
逃げるな、塔矢。オレから逃げるな。
そう、声に出してはいないのに、ヒカルの声が聞こえたように、アキラの腕がヒカルの首に絡まる。鳴き
声の中に、切れ切れに名前を呼んでるのがわかる。
その声にヒカルは我を忘れた。
荒く貪るようにヒカルがアキラの内部を蹂躙すると、それに応えるように、アキラがヒカルにしがみつく力
が強くなる。ヒカルは急激に限界を感じて、アキラの名を呼びながらできる限りの一番奥で、自分自身
を解放した。
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