Tonight 19 - 24


(19)
二人とも、ぜいぜいと息をつきながら、重なり合ったまま動けずにいた。
大きく上下する塔矢の胸の上で、オレは塔矢の呼吸をリアルに感じる。

まだオレ達に添えられた手に、そっと自分の手を重ねる。
ぴくん、と塔矢の肩が動いて、塔矢が薄く目を開ける。
目尻には涙が滲んで紅くなってて、潤んだ目元が壮絶に色っぽいと思った。
そう思った瞬間、さっきあれだけ吐き出したばかりのオレの分身がずくんと痛んだ気がした。

もしかしたら、あの時塔矢はもうそれでいいと思ってたのかもしれない。
でも、オレはまだだった。まだ、足りなかった。


(20)
力を失った塔矢を軽く握りこむと、塔矢はきゅっと目をつぶって顔を横に向ける。
そんな些細な仕草に、また、どくん、と血が集まるのを感じる。
ゆっくりと塔矢の片膝を立たせ、脚の間のその向こうの塔矢の身体の奥を探る。ぼんやりと反応の
なかった塔矢は、オレの指がそこに押し入ろうとした時、はっと目を見開いてオレを見た。
オレがこれから何をしようとしているかわかったんだろう。
塔矢の身体が硬くなり、塔矢の目が真っ直ぐにオレを見た。
その黒い瞳を、オレも真っ直ぐに見返した。
塔矢を見たまま、また指でその周辺をぐるりと撫で、指先を軽く押し入れる。そして問いかけるように
ただじっと塔矢の目を見ていたら、塔矢は目を閉じて身体の力を抜いた。

時々ビクンと塔矢の身体が強張る。でもすぐに塔矢は深く息を吐いて、できるだけ力を入れないように
身体を緩める。塔矢の協力を得て、オレの指はゆっくり塔矢の中に入っていく。そのままだとさすがに
入れ辛いので、塔矢とオレがさっき吐き出したものを指にとり、そのぬるりとした感触を味方にして更に
指を進めながらゆっくりとそこを押し広げていく。


(21)
それでもやっぱり塔矢の身体は硬くて、一生懸命オレの指を我慢してるって感じで、でもオレは塔矢
にもよくなって欲しかったから、少しずつ指を動かしてそこを捜した。
お願いだから、塔矢。
そう心に念じながらそこにあるはずの箇所を探る。
ぐるっと指を動かしたその時に、塔矢の身体がビクン、と震えた。
それに、ドキン、とオレの心臓が反応する。もう一度、指を戻してさっきの辺りをもう一度、探る。
「あっ…」
今までずっと、ほとんど声も出してなかった塔矢の口から、思わず、といった感じの声が漏れ、その声
に自分でびっくりしたみたいに塔矢はクッと唇を引き締める。その表情にゾクッときながら、どうやら見
つけたらしい塔矢のその場所をぐるっと軽くなぞり、次いで、指先でぐっと強く押した。
「あああっ!」
また、塔矢の口から悲鳴が漏れ、塔矢の腰が逃げるように動く。
とっさにオレは空いた腕で塔矢の腰を抱え込んで逃げられないように固定する。
さっきまで萎えていた塔矢のモノはビクビクと勃ち上がりながら涙を溢し始めている。
それなのに、抱え込んでる身体は火傷しそうに熱く、汗を滲ませているくせに、暴れてオレの腕の中から
逃げようとするから、どうにかして塔矢をなだめたくて、オレは目の前にあった塔矢を口に含んだ。


(22)
塔矢がオレの口に放ったそれをオレはそのまま飲み下した。
口の端にこぼれたのを手の甲で拭ってそれも舐め、そして顔を上げて塔矢を見た。

白い胸が荒い息に激しく上下している。
手はぎゅっとシーツを握り締めていて、白い喉をのけぞらして。
快感の余韻に震える白い身体はまるで陸に上げられた魚のようだと思いながら塔矢の中に入れてた
方の指をぐるんと回したら、また塔矢の身体がびくっと震えて、逃げるように身を捩じらせた。
駄目、塔矢。逃げないで。お願いだから。オレから逃げないで。
よかったんじゃないの?イヤだったの?ねえ、塔矢。
塔矢の反応が悲しくて、オレは指を抜き取り、その手でまだびくびく震えてる塔矢を緩やかに撫でさすり
ながら、伸び上がって塔矢の顔を覗き込もうとしたら、ちょうど顔を上げた塔矢と目があった。
荒い呼吸を抑えようとしながら、驚いたような、泣きそうな顔をしている塔矢。
薄闇の中で、塔矢の目だけが濡れて黒く光ってるような気がして、ズクンと下半身に一挙に血が集まる
のを感じた。

その真っ黒な目を見つめたまま、そっと滑らかな太腿を擦ると、塔矢はまたブルッと震える。でも、震え
ながらも目は逸らさない。だからオレも目を逸らさないままそのまま手を膝まで滑らせてぐっと脚を押し
広げた。塔矢の肩が緊張に強張る。手がまたきゅっとシーツを握る。下半身は小さく震えてるくせにオレ
の手には逆らおうとはしない。


(23)
もしかしたら、オレの手も、塔矢と同じように震えていたのかもしれない。
でもオレは震えながら、もうはちきれそうになって着てるオレを、塔矢の入り口にぐっと押し当てる。
闇の中で塔矢がますます大きく目を見開く。
その両の目の深遠に、オレの意識は吸い込まれそうになる。吸い込まれそうになって、オレはもう一つ
の深い穴にぐっと自分自身を進めた。一瞬、限界まで大きく目を見開いた塔矢は、次には顔を背けて
ぎゅっと強く目をつぶる。シーツを掴んでた手に力が篭る。じわり、とオレが進むにつれ、ギリリ、と塔矢
は歯を食いしばる。

オレにはわからなかった。
どうしてこうまでしてオレを受け入れてくれてるのか。
苦痛に顔を歪めながら、それでも次には息を吐き、強張る身体を緩めようとし、そんなに一生懸命に
オレを迎え入れようとしてくれてるのか。
わからないけど、わからないけど、それでも、でもそれだけでオレはもうどうしていいかわからなくて、
わからないままにもう進んでいくしかなかった。
せめて少しでも塔矢の苦痛を宥めたくて、そこから気を逸らせてやりたくて、添えていた手で塔矢を
軽く握りこむと塔矢は一瞬息をのむ。続けて緩く刺激してやると、はあっ、と熱い息をはき出し、その
分、オレがまた一息塔矢の中に入っていくと、押し出されたみたいに塔矢の口からまた空気が漏れる。
そうして少しずつ、狭くて熱い塔矢の中にオレは進んでいく。
塔矢の中に入っていく。塔矢がオレを包み込んでいく。
段々、段々、オレと塔矢は近づいていく。
あと、一息。
そう思ったらもう我慢できなくて、最後はかなり乱暴に、強引なくらいに自分自身を押し込んだ。


(24)
いつの間にかオレもぎゅっと目をつぶっていた。そうするとオレ全部を包み込んでる塔矢の感触が
余計に感じられて、熱くオレを締め付けている塔矢の中の感覚に、ちょっとでも動いたらそれだけで
イッちまいそうだと思った。
そうして必死にオレを包む塔矢に耐えていたら何かが腕に触って、ビクッとしてそれをみたら、さっき
までシーツを握り締めていたはずの塔矢の手だった。
塔矢。
視線を戻して塔矢を見たら、呆然としたような、信じられない、といった目がオレを見上げていた。
涙で濡れた塔矢の黒い目は、例えば"純粋"という言葉を何かであらわそうと思ったらこんな色をして
るんじゃないかと思うような、そんな、透明で、深い、深い色をしていた。
さっきまであんなに苦しそうな顔をしてたのに、オレを見た塔矢はほんの僅かにだけどキレイに微笑
んで、オレに手を伸ばした。
そしてそのまま塔矢の腕がオレを引き寄せようとする。
駄目、塔矢。だって、動いちゃったら、オレ、もう、

塔矢の腕がぎゅっとオレを抱きしめ、オレは塔矢に抱きしめられながら塔矢の中にオレを放つ。
気が遠くなりそうな快感の中で、オレの身体を強く抱きしめている塔矢の腕を、オレは強く、強く感じ
ながら、塔矢の身体の上に倒れ込んでいった。



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