Happy Little Wedding 2
(2)
「これからどうするんっすか?」
高原の空気と同じくらい爽やかな声で芦原が言った。
声変わりが始まってもその声音は相変わらず弾むように明るい。
緒方が小学生の頃、音楽教師に「頬骨を上げて明るい顔で歌いましょう、
そうすれば自然と明るい声が出る」と注意されたことがあった。
その理屈で行けば、いつもニコニコ楽しそうにしている芦原から
その表情にぴったりの朗らかな声が出るのは、全くもって道理というものだ。
――何故そんなことをしたくなるのか自分でも分からなかったが、
緒方は芦原から目を逸らし遠くの山を見た。
芦原に負けず劣らず、いつも柔らかな微笑みを湛えている明子夫人が答えた。
「まず宿で荷物を置いて、それから少し早いけれど主人と私はお昼にするわ。
午後になったらすぐ会場へ向かわなきゃならないものだから。
アキラさんもその時一緒に食べさせてしまおうと思っているんだけれど、
緒方さんと芦原さんはどうなさる?ペンションの昼食は11時から2時半までの間なら
融通が効くらしいから、若い人たちは今は軽食だけにして、後でちゃんとお昼を
摂っていただいたほうがいいのかしら・・・」
「や、オレもう入りますっ。朝メシが早かったですし」
「あら、そう?緒方さんはどうなさる?」
正直な所、午前中はあまり食欲が出ない質である。
だから昼食ももう少し後のほうが有り難いのだが、どうせこれから食卓のある所へ行くのに
後で改めて一人で昼食を摂るというのも二度手間のようで面倒だった。
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