第162局補完 2


(2)

四月になるまでここには来ない。それなら待とうと、最初は思っていた。
けれど日が経つにつれ、寂しさと空虚感は募るばかりで、ヒカルが来ないと思うと自然、碁会所
からも足が遠ざかった。
つい先日までは彼と打っていたこの場所で、一人でいるなんて耐えられない。
気を紛らわすように語学教室に通っても、虚しさは消えない。
それによく考えれば、四月になれば来るという保証はどこにもないのではないか?
「置いていかれそうだ。」などと弱音をはいてしまったのを、自分も歩みを止めないと、まだ大丈夫
だと、自分自身に言い聞かせてなんとか立て直した。
それももう二月も前のことだ。
一度同じ対局日に姿を見かけて以来、打つどころか口を利くことも顔を見ることもない。
そうなってみればむしろ、週に何度もあの碁会所で打っていたことが、まるでありえない事だった
ように思えてくる。

それなのに。
自分が無様な負けを晒したような日に限って前触れもなく現れて、「折角見に来たのに」だって?
ふざけるな。
「馴れ馴れしく触るなよ。キミなんか…キミにとって、ボクなんかどうでもいいんだろ。
ボクのことなんて気にかけてもいないくせに。」
「何馬鹿なこと言ってんだよ、おまえは!」
「またひとを馬鹿呼ばわりか?自分の都合が悪くなるといつもそうだな。まったく、相変わらず勝手
な奴だよ、キミは。」
声を聞くのも腹立たしい。顔なんか見たくない。
ついて来るな。そう思ってるのにどうしてわからないんだ。
「塔矢、」
立ち止まるのが嫌でエレベーターを通り過ぎてアキラは階段に向かった。



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