黒い扉 2
(2)
都内の一等地。
緒方に伴われて行った、とあるビルの地下にその店はあった。
表には看板が出ていない。窓のない黒大理石の壁に囲まれた階段を降りて行くと
下はちょっとした日本庭園風の空間になっていて、
綺麗に均された白砂の上に飛び石、小高い築山の上に小さな松と石灯籠、
足元から蒼い光でライトアップされた人口の池には鯉まで泳いでいる。
確かに凝った作りではあるが、幼い頃から父親に連れられて料亭などに行き慣れている
アキラにとってはたいして珍しい店構えでもなかった。
ただ一つ異和感があったのはその店の巨大な黒い扉である。
威圧するような金属製のその扉は地下のこの空間には不釣合いなほど高く、
大人二人が両腕を広げても届かないくらい幅が広く、
何かとんでもないものがその向こうに隠されているような、
一度それを開いてしまったら二度と後戻りは出来ないような――
そんな運命的な存在感を見せてそこに立ちはだかっていた。
「・・・いいんだな」
「はい」
二人が並んで前に立つと、
ギギィー・・・と重々しい音を立てて、迎えるように黒い扉は開かれた。
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