戻り花火 2


(2)
「なぁ、ちょっとこっち見て」
「どうして?」
「どうしても」
「理由を言え」
「・・・かっ、かわいくねーな。いーだろ、ちょっとくらい!減るもんじゃなし」
「減る」
「減らねーよ!」
「・・・こうしている間にも、どんどん燃え尽きていってしまうだろう?」
「ん?・・・あー」
整いすぎるほど整ったアキラの横顔は、静かに揺れ輝く光を映している。
自分の手の中で一時明るく熱く燃え上がっては瞬く間に尽きていく儚い命を惜しむように、
アキラは慈しみにも似た眼差しで手元の熱の花を見つめていた。
たまにアキラはこんな表情をする。
静かで安らかな、全てを許し慈しむような。

アキラをこちらに向かせるのは諦め、その代わりにヒカルはアキラに寄り添うように
肩を触れ合わせてしゃがみ込んだ。
アキラは何も言わない。
「・・・ちょっと寒くなってきたから、こうさせてくれよな」
「うん」
アキラの花火が一際明るい緑がかった白い光を放ち、燻すような音を立てて燃え落ちた。
同じ袋詰めにされて一時の慰みのために売られる花火でも、アキラの手の中で
アキラの視線を一身に受けて燃え尽きるならこの世に生まれてきた甲斐もあろうと思う。
アキラと同じ生身の人間でさえ、その手に触れることもその視界に入ることすら困難だというのに。



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