セイジのひみつ日記 2


(2)
「前に誰もいないと、何だかボクたちだけの映画館って感じがしますね」
映画はまだ始まっておらず、小さなライトが座席を照らしている。女子高生と思える2人連れは
声高に互いの恋愛話に花を咲かせていたが、彼は周囲を憚るように小声で囁いてきた。
「…ふふ、なんだかワクワクしてきた……」
暗くなる前にホットドッグを食べるよう彼に薦めると、彼は素直に頷き、ガサゴソと袋を弄って
私に包みを一つ渡し、自分の膝にも一つ乗せた。
「いただきます」
礼儀正しい彼らしく私に一礼すると、小さな口をいっぱいに開け、ホットドッグにかぶりついた。
私も自分のものを食べてはいたが、彼の口許から目を離せなくなってしまった。
ホットドッグを食べるのを中断した彼はポテトを摘んで口許に運び、咀嚼し、そして呑み込む。
無意識にだろう、赤い舌をひらめかせて彼は自分の唇を舐める。ライトの加減で彼の柔らかい
唇がオイルに塗れていやらしく光っている様は、私にある種の感情を呼び起こさせた。
私は狼狽した。公衆の面前でその行為に及ぶことを、今までに一度も考えたことがないとは
いえなかったが、彼を映画へと誘ったのはそのような気持ちがあってのことではなかった。
彼の唇から無理矢理視線を引き離したその時――映画館に暗闇が落ちた。



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