白と黒の宴2 2


(2)
社に会う事は出来る限り避けたかったが、一方で少しでも早く結果を知りたいのも本心だった。
棋院から渡されていた対戦表を見つめる。最初これを見た時血が騒ぐのを感じた。
あの組み合わせでは選手になれるのはヒカルか社、絶対どちらか片方でしかない。
北斗杯の期間中は代表選手同士で昼夜を共にすることになる。無意識のうちに呟く。
「…進藤、勝ってくれ。必ず…!。」
ただ、自分が本心からそう言っているのかどうかはわからなかった。

選考会がほぼ終了する頃を見計らって出向いたつもりだった。
先日碁会所で手合わせした社の碁は変わっていて面白いとは思ったが、
ヒカルはその上を行くと確信していた。
自分が緒方に破れた時、ヒカルも森下九段に打ち負けたのは知っている。
だがあくまでそれは実践経験の差であり同じ初段の社がヒカルの敵となるとは思えない。
だが棋院会館に足を踏み入れたアキラの目の前で繰り広げられた光景は予想を上回るものであった。
社とヒカル、二人の碁を見守る周囲の人達の様子でそれは瞬時に感じられた。
何かが起こっている。
注目すべき盤面を見る事が棋士にとって何よりも優先する。
気がつくとアキラは対峙するヒカルと社の対局の場に立っていた。
と同時にその局面に目が引き付けられた。
ちらりと一瞬だけ社がこちらを見たような気がする。だがそれだけで、彼もまた今は
プロ棋士として全神経をヒカルに対し次に打つべき一手に集中させていた。



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