裏階段 三谷編 2


(2)
シャツの一番下のボタンを外して視線を彼の顔へ向けた。彼の大きな瞳が視線を反らす方へ
動くのが分かった。彼はいつもそうだった。
こちらが見ていない時はこちらを見つめ、こちらが目を向けると目を反らす。
そういう習性を持つ動物のように。
そのまま無表情にどこか遠くを見ている彼の顔を眺めながらシャツを左右に開いた。
痩せて鎖骨や胸骨の陰影を伴った青白い胸の左右にアクセサリーのように紅く色付いた
小さな突起があらわれる。そのうちの一つの脇には小さく引き攣れた火傷の痕があった。
煙草を押し付けられた痕である事は容易に想像出来た。



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