アキラとヒカル−湯煙旅情編− 2
(2)
アキラを意識するようになってから、ヒカルは毎晩塔矢を思い、妄想の中の彼を抱いた。
妄想の中のアキラは切なげな表情でヒカルを呼び、激しくヒカルにしがみ付いてきた。
「あいつもオレを抱いてんのかなあ、なんかそれっぽいよな。」
妄想の中の塔矢ではなく、本物の塔矢を抱きたいという思いとともに、二人の立場をハッキリさせたい、という狙いがこの旅行にはあった。
「塔矢」
窓際で佇むアキラを後ろから抱きすくめ、髪に顔を埋める。塔矢の髪の香り、いい匂いだ・・・ヒカルは急激に高まった自身をアキラの腰に擦り付けながら、そのうなじに口づけた。
「あ・・・ちょっ・・・進藤っ。」
「失礼いたします――。」
仲居さんの声に、アキラはヒカルを突き飛ばし、ヒカルはその拍子に畳にしりもちをついた。
「イテテテテ・・・。」
「お茶お持ちいたしました―、あれ、どうなさいました?」
「いやーなんか腰いてーかなー、なんて、ハハハ。」
そういえば、すぐお茶持ってくるって言ってたな・・・。
ヒカルはまだ熱を持つ分身を座布団でカムフラージュした。
「ここの温泉は腰痛にも良く効きますから、入られるとよろしいですよ。」
「温泉かぁ―あとで一緒に入ろうぜぇ塔矢。」
見ると、アキラは顔を赤らめている。
なんか可愛くないか?今日の塔矢・・・ヒカルは口元が自然と緩んでくるのを感じていた。
これから起るであろうイベントの数々・・・それらがヒカルの胸を期待とちょっぴりの不安でとくとくと高鳴らせているのであった。
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