初摘み 2
(2)
十二月に入ってすぐにヒカルはアキラに訊ねた。
「なあ、もうすぐオマエの誕生日じゃん。何か欲しい物ある?」
自分の時は、ナイロン素材のヒップバッグをもらった。一月遅れのプレゼントだった。
こういう物に疎そうなアキラがわざわざ自分で捜して選んでくれたと知ったときは、
感激した。何より、自分の誕生日を知っていてくれたことが、嬉しかった。ヒカルも
何か喜んでもらえる物を渡したかった。
本当は自分で考えて選んだ方がいいのだが、アキラの喜びそうな物など見当もつかない。
アキラは物に対する執着が、極めて薄そうだった。アキラと屈託なく話せるようになって
まだ二ヶ月も経っていなかった。
「………キミ…」
「は?」
一瞬、理解できなかった。言葉の意味が脳に浸透していくにしたがって、ヒカルの顔も
紅く染まっていった。
「や、や、や、ヤメロよ〜ビックリするだろ〜」
冗談で返そうとしたが、アキラの真剣な眼差しに囚われてヒカルは戸惑った。
「オレ…オレ…」
俯いて口ごもるヒカルにアキラが笑って言った。
「ゴメン…冗談だよ。」
少し哀しそうなその声に、慌てて首を振った。
「いい、いいよ。オマエに、やるよ。」
言った後で少し後悔した。ヒカルはそっち方面の情緒では、同じ年頃の少年より遅れていた。
「いい」と言った物のどうしていいのかわからなかった。キスだって、つい最近経験した
ばかりなのだ。
アキラの手がヒカルの髪をそっと梳いた。
「ホントにいいんだね?」
念を押すアキラに、ヒカルは頷いた。まだ、時間はある。その間に少しくらい調べることは
出来ると思った。
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