平安幻想秘聞録・第一章 2


(2)
「あぁ。ごめん、嫌なことを言っちまったよな」
「いいえ、いいえ。光が気にすることはありませんよ、それに・・・」
 そこまで言って、佐為はちらりと明の方見た。
「何?」
「佐為殿の口からは言い難いと思うから、僕から話そう。君の言う通り、
菅原さまの碁笥に白石は混じっていたんだ。けれど、対局の始まる前に
菅原さまが申し出られ、佐為殿の碁笥に戻されて、ことなきを得た」
「そいつが申し出て?」
「はい。もっとも、藤原行洋さまが念のために碁笥を改めてはと、帝に
ご進言下さらなかったら、どうなっていたかは分かりませんが・・・」
 佐為も明もはっきりとは言わないが、やはり相手はそれくらいのいか
さまはやりそうな男らしい。
「藤原行洋さまっていうのは、あっちじゃ塔矢先生のことか」
 先程、ヒカルが話していたときも、緒方、和谷、伊角という名に二人
が頷いたり笑ったりしていたのを思い出した。どうやら、こちらに該当
する人物がいるらしい。
「君には筒井筒(幼馴染み)はいる?」
「えーと、あかり。藤崎あかりっていう幼馴染みがいるよ」
「あかりの君ですね」
「君が碁を始めた頃、学校というところで良く打ってた相手がいたと言
っていたよね。その人たちは?」
 もちろん、平安の時代には学校も寺子屋もない。さっきヒカルもその
説明に苦労したのだ。
「んーと、三谷に、筒井さんに・・・加賀も、入れていいのかな、良く
ってわけじゃないけどさ」
 試しに、名前を挙げて行くと、検非違使だと聞かされた近衛の同僚に
同じ姓の者がいるらしい。
「本当に、こうやって話を聞けば聞くほど、あなたと光が別人だなんて
思えなくなって来ます」
 感慨深げに呟く佐為に、明もきょとんとした表情を見せるヒカルの顔
を見つめたまま頷いた。



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